世界最大のダム、満タンになると地球の自転を遅くしてしまう
中国湖北省の三峡ダムが満水時に蓄える約40立方kmの水は、その膨大な量によって地球の形状をわずかに変形させ、地球の自転速度を低下させるという現象が報告されている。水塊が赤道付近に集中することで地球の慣性モーメントが増加し、フィギュアスケーターが腕を広げて回転速度を落とすのと同じメカニズムで、自転が遅くなるとNASAが指摘する。その影響の度合いは1日の長さで0.06マイクロ秒であり、人間の知覚ではまったく感知できない極めて微小なものながら、それでも確実に地球の力学を変化させているのである。
このような巨大インフラによる地球自転への影響は、三峡ダムだけに限らない。温暖化に伴う南極大陸やグリーンランドの氷床融解も、同様のメカニズムで地球の自転に作用している。解けた氷が水となって赤道付近に流れ込むことで、2000年以降の100年あたりで約1.33ミリ秒のペースで日が長くなっているとNASAは報告している。三峡ダムによる影響が0.06マイクロ秒なのに対し、氷床融解による影響がはるかに大きいという事実は、気候変動が地球の基本的な物理特性まで変化させることを象徴している。
宇宙産業やグローバルなサプライチェーンにとって、地球の自転変化は無視できない要素となりつつある。GPS衛星やその他の測位・観測衛星は、地球の自転速度や形状の変化を正確に補正する必要があり、測位精度やデータの信頼性に直結する。さらに地球観測衛星から得られる環境監視データの解釈も、地球そのものの物理的な変化を考慮に入れなければ正確性が損なわれる可能性がある。大規模インフラプロジェクトが局地的な環境に与える影響だけでなく、地球全体のスケールでの物理的変化まで監視する必要が生じているのである。
日本の製造業・部品サプライヤーにとっても、このような長時間スケールでの微小変化を計測・検証する技術が今後重要になると考えられる。精密なセンサー技術、測定機器、データ解析システムなど、極限の精度で地球環境の変化を捉える装置や素材の開発は、衛星システムの精度向上を支える基盤となる。同時に、大規模インフラが地球という惑星システムに及ぼす長期的な影響を事前に評価する技術も、今後のプロジェクト開発では必須になる可能性がある。地球規模の環境変化と人間の活動が相互に作用するこの時代において、製造業は単に個別の機械や部品を供給するだけでなく、惑星規模の物理的影響を配慮した設計・製造が求められるようになっていくと考えられる。
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出典:ギズモード・ジャパン




