一度トラブった宇宙船、NASAが諦めきれない理由は「後継機がない」
2024年に起きたボーイングのStarlinerのトラブルにもかかわらず、NASAは今もなおこの宇宙船を使い続ける計画を進めています。その理由は、将来の有人宇宙飛行能力の確保にあります。
Starlinerは2024年にスラスターの不具合で国際宇宙ステーション(ISS)への帰還に支障をきたし、乗組員2人が当初予定の8日間から約9カ月間も宇宙に留まることになりました。結果としてSpaceXのCrew Dragonでの帰還を余儀なくされています。これだけの重大なトラブルを経験しながらも、NASAはStarlinerの有人ミッションをさらに2回発注する方針を示しています。この決定の背景には、複雑なサプライチェーンと将来の宇宙利用構想が絡み合っています。
Starliner継続の第一の課題はStarliner自体の信頼性回復です。2024年の飛行で問題になったスラスターなどの改修を行い、まず無人飛行試験を実施して成功させた上で、有人飛行に必要な認証を新たに取得する必要があります。第二の課題は、Starlinerを宇宙まで打ち上げるロケットです。現在Starlinerはアトラス5ロケットで打ち上げられていますが、このロケットは退役が決まっており、残る6機がすべてStarlinerのミッションに割り当てられています。この6機を使い切った後は、別のロケットへの切り替えが必須となります。しかし新しいロケットに変更すれば終わりではなく、新ロケットとStarlinerの組み合わせで安全な有人飛行ができることを確認し、改めて認証を受ける必要があります。これらの作業にはNASAも支援することが報じられています。既にボーイングはStarliner計画で20億ドルを超える損失を計上しており、さらなる投資が必要な状況です。
それでもNASAがStarliner継続にこだわる主な理由は、主要な競争相手であるCrew Dragonの不確実性にあります。Crew Dragonはトラブルに見舞われたStarlinerの乗組員を安全に帰還させ、その信頼性を証明しました。しかしSpaceXはNASAとの協議で、2030年までにCrew Dragonの運用を終了する意向を示しているとのことです。これは大きな問題です。ISSも2030年ごろに引退しますが、その先には複数の民間宇宙ステーション計画が控えています。こうした施設へ人間を輸送する宇宙船がなければ、宇宙産業の継続性が失われます。Crew Dragonという唯一の現実的な代替手段が消える未来を見据えると、Starlinerの信頼性確保は、NASAにとって必ずしも避けられない選択と言えます。
宇宙産業のサプライチェーン観点からみると、この状況は複数の有人宇宙船の並行開発と運用の重要性を示唆しています。単一の宇宙船に依存することの危険性が、Starlinerのトラブル自体によって明らかになったにもかかわらず、次の段階ではそれでも2つの宇宙船を必要とする構図になっています。ロケット・宇宙船・各種部品の複雑な依存関係は、部品メーカーや装置サプライヤーにとって、長期的な需要予測と多元的な顧客基盤の必要性を改めて突きつけるものです。
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出典:ギズモード・ジャパン




