ダークマター支援で40トン級黒い穴、星の内部に存在可能
ホーキング放射によってブラックホールは蒸発するという理論を背景に、暗黒物質の存在下では、わずか40トン程度の初期質量を持つブラックホールがコンパクト星の内部で蒸発を回避して成長し続ける可能性があることが、理論計算により示された。暗黒物質の継続的な供給がホーキング蒸発による質量喪失を上回る場合、極めて小さなブラックホールも質量を増加させ続けることができ、最終的には母星を完全に吸収してブラックホールへ変えてしまう可能性があるという研究結果である。
1974年にホーキングが示した理論によれば、ブラックホールは量子過程を通じてゆっくり蒸発し、その速度はブラックホールが軽いほど速くなる。この理論から考えると、宇宙初期に形成された原始ブラックホールのうち、質量が十分に小さいものは現在まで生き残ることが難しいはずだった。しかし新たな研究が示唆するのは、中性子星やホワイトドワーフといったコンパクト星の内部では、超重い暗黒物質粒子の蓄積によって全く異なる事象が起きうるということだ。超重い暗黒物質粒子は効率的に対消滅しないため星の中心に蓄積し、自己重力の影響下で崩壊してブラックホールを形成する可能性があるとされている。
コンパクト星の内部でブラックホールが形成されると、そのブラックホールの運命は、周囲から流入する物質による質量増加とホーキング蒸発による質量喪失の競争で決まる。暗黒物質を考慮しない計算では、ブラックホールが成長するための臨界質量は約1万トン程度とされるが、暗黒物質の供給を含めると、銀河系円盤部では1万トン、より暗黒物質が豊富な銀河中心の膨らみ部分では40トンまで低下する可能性があるとされた。この値は実際に観測されたものではなく、理論上の臨界値である。この条件下では40トン程度のブラックホールが正の成長率を持ち、十分な時間があれば成長を続けることを意味している。
この理論的予測が持つ重要性は、逆説的ではあるが、観測的な制約として機能する点にある。もし特定の性質を持つ暗黒物質が急速にブラックホール形成を促進し宿主星を破壊するならば、数十億年にわたって生き残っているミリ秒パルサーやホワイトドワーフの存在は説明がつかなくなる。言い換えれば、これらの高齢な天体の存在そのものが、暗黒物質粒子の質量と通常物質との相互作用の強度に対する制約条件となり、天体が暗黒物質の自然の検出装置として機能していることを意味している。暗黒物質の正体に迫るために、理論計算と観測天体の性質を組み合わせた分析手法が採用されつつあるのだ。
暗黒物質の本質解明は、宇宙の基本構造を理解するうえで最重要課題の一つであり、これはまた宇宙観測機器や高感度検出器の技術進化を駆動する源となると考えられる。コンパクト星の精密観測には重力波検出器やX線天文衛星といった複雑で高度な観測機器が必要とされ、日本の製造業がこうした機器の部品や検出器の開発に携わっている場合、この研究分野の進展は観測インフラの拡大と、それに伴う部品需要の増加に直結する可能性を持つ。製造業にとって、暗黒物質研究の深化は新たな機器開発や精密部品の市場拡大という形で関係していく可能性がある。
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