水星のグラファイト外殻と核の形成過程を解明
水星の表面を覆うグラファイト地殻と、異常に大きなコアの内部構成の謎が、実験室での再現実験を通じて明かされ始めた。ベルギーのリエージュ大学とKUルーフェン大学の研究チームは、40億年以上前の水星内部で起きた現象を高温高圧実験で再現し、特に炭素がいかに分布・結晶化したかを詳細に追跡した。
水星は人類にとって観測が最も難しい惑星の一つであり、この星に関する知識はほぼ観測衛星による間接データに限定されている。1974年のマリナー10号、2011年のメッセンジャーと、わずか2機のプローブからの観測データだけが頼りである。火星や金星と異なり、水星からのサンプル採取も、そこに由来する隕石の発見も実現していない。こうした厳しい制約の中で、研究チームが採用したのが実験岩石学という専門分野だ。この分野は、過去数十億年前の惑星内部の温度・圧力・化学環境を実験室で精密に再現し、そこで形成される鉱物や金属、ガスの挙動を直接調べることで、惑星形成の歴史を物理的に逆算するアプローチである。
1250℃から2170℃の間、かつ惑星深部と同等の圧力条件下での実験を重ねた結果、炭素の挙動に関わる重要な発見がもたらされた。通常、酸化的な環境では炭素は金属に強く引き寄せられてコアへ入り込む性質がある。ところが水星のような極度に還元された環境では、炭素は金属への親和性を著しく失い、珪酸塩マグマに留まり、やがてグラファイトとして結晶化する。このグラファイトは軽量なため、マグマの海に浮き上がり、地表に蓄積して厚さ40~120メートルの原始地殻を形成したと考えられる。メッセンジャーの観測データから推定される水星表面のカーボンリッチな層(質量比で1~3%)とよく合致する結果だ。一方、水星の例外的に巨大なコア(惑星全体の質量の約70%)は密度不足を補うため軽元素を含むはずだが、この研究からはコア内の炭素濃度は0.5%以下と極めて低いことが判明した。コアの軽元素は主にシリコンであり、次に硫黄である。これら軽元素は鉄の融点を大幅に低下させ、水星のコアが45億年間にわたり少なくとも部分的に液体状態を保ち続け、磁場を維持してきた理由を説明する重要な手がかりとなる。
この研究は、水星のような極度に還元された天体のみならず、より大きな原始水星や仮説上の「スーパーマーキュリー」、カーボンリッチな系外惑星、さらには還元物質から大部分が構成された初期地球の形成メカニズムを理解するための理論的な枠組みを与える。ベピコロンボなどの将来の探査ミッションによる観測がこれらの仮説を検証することになるだろう。日本の部品・装置メーカーにとって、こうした基礎科学の進展は次世代の宇宙探査ミッションに求められるセンサーや観測機器の要件形成に直結する知見となる可能性がある。水星のような特殊な環境での観測手法や計測精度の向上は、精密加工と耐熱材料技術に強みを持つ日本の産業が貢献できる重要な領域でもある。
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出典:Phys.org / 自動翻訳のため訳文が不正確な場合があります



