火星の活溝の真犯人は水ではない、その正体は
火星表面の浸食地形であるガリー(溝状の地形)が時間とともに変化していることが観測されてきたが、従来は水による浸食が原因だと考えられていた。しかし新たな研究によれば、これらのガリーは液体の水ではなく、二酸化炭素(CO2)フロストの流動化が引き起こしていることが示唆されている。フランスの研究チームが火星探査機マーズ・エクスプレスとマーズ・リコネサンス・オービターから得たデータを分析した結果、この新たなメカニズムが明らかになった。
背景として、火星で観測されるガリーは地球上の水による浸食地形と非常によく似ている。しかし火星の環境は極めて厳しく、液体の水が地表に存在し続けることは原理的に不可能である。研究チームが行った分光分析により、春季にCO2氷が消失する時期に、水特有の吸収帯がまったく検出されないことが確認された。また、水の生成に通常必要とされる塩やクレイ鉱物は、ガリーが形成される地域ではなく高い台地に限定されていた。さらに地熱由来の温泉メカニズムが活動する時期は冬から春初期であり、ガリー活動が本格化する春の中盤以降とは時間的にずれていた。従来有力とされていた二つのメカニズムのいずれもが観測データと矛盾することが明らかになったのである。
こうした矛盾を解くために研究チームが提唱する新しい説が「CO2フロスト流動化」である。火星は冬の間、透明なドライアイスの層に覆われる。春になると日光が増し、下の暗い土壌が温まり、底部のCO2が昇華し始める。発生したCO2ガスはエアホッケーのテーブル下から吹き出す空気のように、ドライアイスと土壌の塊を潤滑する。ガスが潤滑油として機能することで、本来は静止している固体の堆積物が、斜面を高速で滑り落ちる流体的な動きを始める。この流動によって、火星表面に見られるガリーのような浸食地形が削り出される。つまり、地球では液体の水が必要とされる地形変化が、火星ではCO2の物理的プロセスによってもたらされているのである。
この発見が持つ意義は地球と異なる物理的メカニズムでも、見た目は同じような地形が生成される可能性を示した点にある。また、火星の地形変化のメカニズムを正確に理解することは、将来的な火星探査や資源開発の計画立案に重要な基礎情報となる。採掘地点の選定や基地建設予定地の環境リスク評価など、実際の開発段階で必要とされる知識の土台となる可能性が高い。
日本の製造業にとって、火星での採掘や基地建設を想定した極限環境機器の開発では、CO2の昇華や凍結融解サイクルに対応する部品や装置が必要になる可能性がある。極低温での材料特性、CO2環境での機械的耐久性、温度変化への対応力など、地球上では経験しにくい環境での機器開発は、宇宙産業サプライチェーンの重要な要件となり得る。これまで水関連の技術開発を想定していた企業にとって、こうした新しい知見は製品開発方針の見直しを促す可能性がある。科学的理解の進展に伴い、宇宙機関からの要件仕様も変わることが予想され、それに対応できる技術力を備えた部品メーカーの重要性は増していくと考えられる。
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出典:Phys.org / 自動翻訳のため訳文が不正確な場合があります



