航空観測所、曇天下の日食中に太陽コロナの観測精度を向上
NASAの高高度研究航空機WB-57が、地上の曇りを回避しながら日食時の太陽コロナを高精度で観測することに成功した。可視光から赤外線まで9つの波長帯でデータを取得し、2テラバイト以上のハイスピード観測データを得たこの成果は、今後の宇宙天気予報精度向上と衛星運用リスク軽減に大きく寄与すると考えられる。
観測は、アイスランド沖の大西洋上で実施された。この地域は曇りが頻発し、通常の地上からの観測では日食観測が極めて困難な環境である。Southwest Research Instituteはこの課題を解決するため、NASA傘下のJohnson Space CenterおよびLangley Research Centerと協力して高高度飛行による観測計画を立案した。WB-57は高度15,000メートルで月の影を正確に追従しながら、わずかな時間窓の中で太陽コロナの複雑で動的な構造を9つの波長帯で捉えた。観測装置として使用されたSAMIは、もともとLangley Research Centerでロケットのプリュームと再突入カプセルの撮影向けに開発された機器で、今回の日食観測によってその応用範囲が宇宙コロナ観測へと拡張された。飛行計画は緻密に設計され、パイロットと機器操作員がこれを完璧に実行した結果、皆既日食が2分56秒続く高高度での観測に成功した。
日食の際、太陽本体の光が月に遮られることで、通常は太陽の圧倒的な明るさに隠れているコロナの弱い光が初めて観測可能になる。特に高高度からの観測は、地球大気に吸収される赤外線領域での撮影を実現し、地上観測では決して到達することができない情報をもたらす。今回は予期していなかった巨大なプロミネンス(磁化したプラズマの大きなループ構造)も捉えられたという。太陽から放出される高エネルギー粒子が地球に到達した場合、人工衛星の損傷、GPS航法への干渉、電力網の停止など甚大な被害をもたらす可能性がある。こうした太陽活動現象の詳細な理解を深めることは、宇宙天気がもたらすリスクを軽減するうえで不可欠である。
この観測技術の進展は、日本の製造業にとっても直接的な意味を持つ。衛星や地上受信機の開発に際して、より詳細で正確な太陽活動データが利用可能になることで、部品やシステムの設計基準がより厳密に定められ、より高い信頼性と耐久性が要求される可能性がある。また、観測機器そのものの高度化は、カメラセンサー、光学フィルター、高精度なマウント機構といった部品・素材への技術要求を継続的に高める傾向にある。日本の部品メーカーが今後、宇宙観測機器のサプライチェーンに参画する際には、こうした最新の観測技術トレンドを正確に把握しておくことが、受注競争力を左右する重要な要因となるだろう。
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