銀河系ブラックホール周辺の星が伴星を失う理由
銀河系中心の超大質量ブラックホール「いて座A*」周辺で、本来は存在しえない若い星たちの起源が二連星システムの統計分析によって明らかになった。ポルトガルのコインブラ大学を中心とした研究チームは、これらの星が銀河系中心付近でその場で形成されたことを強く示唆する証拠を見出した。
銀河系の中心には太陽の約400万倍の質量を持つブラックホールが存在する。その周囲わずか0.04パーセク(約0.13光年)という極めて近い距離には「Sクラスタ」と呼ばれる星の集団がある。これらのB型星は数百万年程度という若さであり、通常の星形成理論では説明がつかない。ブラックホールの強大な引力は、星が形成される前にガス雲を引き裂いてしまうはずだからだ。この矛盾を「若さの逆説」と呼ぶ。
この謎を説明する仮説は二つ存在していた。一つは「その場形成説」で、現在見られる位置でそのまま星が形成されたとするもの。約600万年前のいて座A*からの激しい放出ガスが周囲を圧縮し、それが分裂して星を作ったという「ガスシェル分裂」メカニズムが提案されている。もう一つは「外部移入説」で、星がより遠くで形成された後に内側へ移動してきたとするものだ。しかし後者は、この星団に観測される高い軌道離心率や、最近発見された二連星システム「D9」の存在を説明しにくい。
研究チームの着眼点は、二連星の割合という統計的手法にあった。銀河系全体で観測される大質量星の二連星率は約69%だが、ブラックホール周辺では43%と低かったのだ。チームは100万年間にわたる10万個の二連星システムのシミュレーションを実施し、ブラックホールの潮汐力がいかに星を引き裂くかを追跡した。シミュレーション結果は、62%が無傷に生き残り、18%が合体し、20%が破壊されるというパターンを示した。予測される二連星率は約38%となり、これは観測値43%と誤差範囲で一致した。この結果はその場形成説を強く支持する。これらの若い星はブラックホール周辺でガスシェル分裂によって形成されたもので、ブラックホールの潮汐力が二連星を次々と引き裂いているために、現在の二連星率が低く見えているということだ。
こうした基礎科学の進展は、同時に観測技術の高度化を象徴している。今後の研究では「星の運動のより正確な測定とスペクトル測定」が必要になるとされており、これには精密光学部品、高度な分光器、高感度検出器、データ処理システムなど多くの技術が統合される。こうした観測機器の開発は、国際的な天文台や宇宙機関と協力する領域であり、日本の光学機器メーカーや精密部品サプライヤーも関与している。宇宙の基本的な謎を解く研究の進展は、それを支える日本の製造業の高度な技術蓄積と直結しているのだ。
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出典:Phys.org / 自動翻訳のため訳文が不正確な場合があります




