地球と火星の形成過程は一緒ではない? 微惑星の合体とペブル集積の寄与率を推定した研究成果
イメージ コペンハーゲン大学のHaiyang Wang氏らの研究チームは、地球と火星の組成から両惑星の成長過程を推定し、その成果を学術誌「Nature Astronomy」に発表した。両者は同じ太陽系で隣り合って形成されたが、成長の仕方は異なっていた可能性が示された。岩石惑星の成長過程は長く解明されていなかった問題であり、今回の研究は組成という別の角度からこの問いに迫ったものである。
岩石惑星の成長には、微惑星が衝突と合体を繰り返して大きくなるという考え方と、原始惑星がミリメートルからセンチメートル台の小石状の粒子「ペブル」を取り込んでいく「ペブル集積」という考え方がある。両者を組み合わせたとする見方もあるが、約46億年前に生まれたとされる地球と火星がどちらの仕組みで主に成長したのかは、はっきりしていなかった。研究チームは、ナトリウム、カリウム、亜鉛といった高温で気化しやすい揮発性元素に着目した。地球と火星の地殻やマントルでは、これらの元素が太陽の組成と比べて乏しい。成長途中の原始惑星がまとう高温のガスの中をペブルが落下する際に揮発性元素が失われると仮定し、微惑星は揮発性元素が強く失われた小惑星ベスタに似た組成だと想定して計算した。
推定の結果、地球は質量の少なくとも75%がペブル集積で成長した2つの原始惑星に由来し、最大25%が微惑星に由来するとされた。一方、火星は約73%が微惑星、約27%がペブル集積に由来するとされた。火星でペブル集積の寄与が低い理由として、火星より質量の大きかった他の原始惑星の重力が火星の軌道を乱した可能性が指摘されている。ただし、微惑星の組成は仮定に基づくため、寄与率の具体的な数値は条件によって変わり得る。Wang氏は、それでも両者が異なる割合の過程で形成された可能性は一貫して示されたと述べている。
この成果について研究チームは、惑星は微惑星の合体とペブル集積の両方が組み合わさって成長するという考え方を支持するものだと受け止めている。惑星形成論は、宇宙産業にとって直接の部品需要につながる話ではない。しかし、将来の探査や観測の計画、さらには深宇宙ミッションで用いる分析機器の要求仕様に、間接的に影響しうる基礎研究である。共著者のAnders Johansen氏によれば、揮発性元素の失われ方を理解できれば、惑星が最終的に保持する水の量や生命を支える物質の量をより正確に予測できるようになる。これは太陽系外の岩石惑星が生命を育める環境を持つかを見極める手がかりとして期待されるが、現時点では研究段階の知見である。
日本の製造業にとって、この研究から直接得られる商機は乏しい。ただし、惑星物質の組成や揮発性元素の挙動を扱う研究は、試料の高温処理、精密な分析機器、耐熱・耐環境性を備えた素材の評価といった技術に支えられている。こうした分野で、加熱装置の部品や分析用の高精度部材、高純度素材を手がける企業は、研究機関との共同開発や分析装置の受注を通じて関わる余地があると考えられる。将来の火星や深宇宙の探査では取得データの精度が問われるため、測定系部品の信頼性を高める取り組みが、長期的に需要の裾野を広げる可能性もある。
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出典:sorae



