暗黒物質の “兆候” を捉えた可能性 国際研究「LZ実験」が興味深い信号の観測を発表
イメージ 国際研究「LZ実験」が、宇宙を支配する謎の物質「暗黒物質」の存在を示唆する可能性のある信号を初めて検出した。ただし現段階では兆候の段階であり、発見とは言えない。だが素粒子物理学の世界では、この1つの信号が大きな注目を集めている。
暗黒物質は、銀河が宇宙で消散せずに保たれている理由を説明するために理論付けられた未知の物質だ。目に見えず光との相互作用もほぼないため、従来の観測手段では直接検出できない。にもかかわらず宇宙の物質全体の約84%を占め、普通の物質の5倍以上もあると考えられている。最も有力な説は、「WIMP」と呼ばれる未知の大質量粒子が暗黒物質の候補であるというものだ。WIMPはごくわずかながら原子核と衝突する可能性があり、地上の検出器で捉えられるかもしれない。LZ実験はこのWIMP検出を目指す国際研究で、アメリカ・サウスダコタの地下約1500mにある施設に設置された観測装置を用いている。本体は約10トンの超高純度液体・気体キセノンのタンクであり、内側に光を検出するセンサーが張り巡らされている。WIMPがキセノンの原子核に衝突すると光が放出され、はじき出された電子も光を出す。この2種類の光の波長、強さ、時間差を測定することで、WIMP由来の信号と無関係なノイズを区別できる仕組みだ。
今年9月、LZ実験は山形県で開かれた国際会議で、2023年3月から2024年4月の220日間のデータ分析結果を発表した。1700個以上の信号のうち、たった1つだけが注目すべき性質を持っていた。その信号「LZ230616」は、WIMPによる衝突と非常に似た特性を示し、もしWIMPなら200GeV以上、おそらく1000GeVの重さを持つ粒子であることを示唆している。これは既知のどの素粒子よりも重い値だ。にもかかわらず有意性は2.6σにとどまり、発見に必要な5σに達していない。
LZ230616が注目を集める理由は、単に珍しいからではない。タンクの中央付近で検出されたという点が重要だ。内壁では外部放射線や装置の特性からノイズが多く発生するが、中央ではそうした背景事象が少なく、真の信号である可能性が高い。既知のノイズ(中性子やニュートリノなど)との比較でも、LZ230616の信号特性は大きく異なっている。さらに、この信号は「塩漬け」という統計的手法をクリアして見つかったもので、素粒子物理学で起きやすい「どこでも効果」(ランダムなデータから意味のない構造が見える現象)による誤検出の可能性が低いと考えられている。
今後の見通しは不確実だ。LZ実験は既に700日以上の観測データを蓄積しており、今後の分析で、LZ230616と似た信号が他に存在するか、あるいはこれが本当に暗黒物質のものであるかが明らかになるだろう。素粒子物理学の歴史では、兆候が信号として確認される場合もあれば、統計的揺らぎとして消える場合もある。1~2年が重要になると考えられている。日本の製造業にとっても、検出装置の超高感度化を支える精密部品・材料技術の進展は、将来の科学装置開発につながる可能性がある。
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出典:sorae




