UchUchU
sorae #月

NASA火星探査「スカイフォール」用の地中レーダーアンテナが着陸200回相当の負荷に耐える

NASAの火星探査ミッション「スカイフォール」で使用される地中レーダー用アンテナが、2026年7月の環境試験で設計要求を大きく上回る耐久性を実証した。2028年後半の打ち上げを予定するこのミッションでは、火星の浅い地下に埋蔵された氷を探査するため、小型ヘリコプター3機に地中レーダーを搭載して運用される。その中核部品となるアンテナは、着陸時の衝撃に耐えられるよう布状の柔軟な素材で設計されており、宇宙機器の実現困難な要求に向き合った設計事例となっている。

火星探査において、浅い地下の氷は単なる学術的な対象ではなく、将来の有人探査ミッションにおいて宇宙飛行士の飲料水や推進剤の原料となる可能性のある資源だ。ただ、これを遠隔で探知することは技術的に難しい。火星を周回する軌道上からは地下数十mの厚い氷層は検出できるが、採掘可能な地下数m程度の氷を把握するには、地表に近い高さで低速で飛行する必要がある。この要求が、小型ヘリコプターによる地中レーダー探査という独特なアプローチの背景にある。

課題はアンテナのサイズ制約だ。地中レーダーが使用する周波数帯(500~2500MHz)に対応するには全長48.3cm のアンテナが必要だが、ヘリコプターの着陸時に地面との間隔はわずか15.2cm しかない。この矛盾を解決するため採用されたのが「ビバルディアンテナ」という薄く平らな形状のアンテナを、繊維状の柔軟な素材で製造する方案である。着陸時には布地のようにたわんで衝撃を吸収し、飛行中は元の形状に戻ってレーダーとして機能する設計だ。このアプローチには、繰り返される変形に耐える耐久性と、必要な電気特性の維持という、相反する二つの要求を両立させなければならない課題が伴う。

これを実現するため、アンテナの表面には過去のNASA火星ローバー「スピリット」と「オポチュニティ」の着陸に使用されたエアバッグ素材「ベクトラン」が何層にも施され、グラスファイバーで形状を保持する構造とした。さらに火星の乾燥した土壌が電波減衰を起こしにくい性質を利用し、アンテナを標準品より小型化して重量を約150gに抑えた。この設計は、従来の宇宙機器では考えられない軽さと柔軟性の両立であり、材料工学と設計技術の統合を示す一つの成果だ。

試験では、温度差が最大94℃に達する火星の昼夜のサイクルを再現した熱試験と、着陸を模した曲げ負荷を繰り返す屈曲試験が実施された。その結果、アンテナは着陸200回分に相当する負荷に耐え、その過程で6回レーダー信号の受発信能力も確認されたという。この耐久試験の成績は、ミッションで想定される着陸回数の2倍以上であり、安全マージンが十分に確保されたことを意味する。宇宙機器の開発では、想定される使用回数を大幅に上回る試験を経て初めて採用される原則が徹底されている。

このような開発の進展は、日本の部品・素材メーカーにとって、宇宙産業への供給可能性を示唆する。ビバルディアンテナの設計、ベクトランとグラスファイバーの材料技術、それらの複合材化による高度な製造技術など、各段階で日本が得意とする分野が関わっている。スカイフォール以降の火星探査やその他の宇宙探査では、さらに多くのこうした特殊部品が必要となる可能性があり、宇宙サプライチェーンへの参加を視野に入れる価値がある。

※ 内容の紹介はここまでです。続きは元記事をご覧ください。

出典:sorae

この分野の企業を探していますか?

UchUchUは宇宙産業に関わる日本企業をデータベース化しています。参入検討・取引先探索にお使いください。