花咲くような“星のゆりかご”の輝き ハッブル宇宙望遠鏡が観測した棒渦巻銀河「NGC 5068」
イメージ ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡が、地球から約2000万光年先にある棒渦巻銀河「NGC 5068」を観測し、その異なる観測特性を活かしたデータが組み合わされることで、星形成の仕組みの理解が深まりつつある。これは、遠く離れた銀河における星誕生の場面を、可視光から赤外線まで多元的に捉える観測体制が整ったことを示している。
NGC 5068は18世紀にウィリアム・ハーシェルによって発見された銀河で、直径は約4万5000光年と推定されている。棒状の構造を持つこの銀河の中心部には、年老いた星々が密集しており、可視光では暗い領域となっている。一方、その周辺の渦巻腕に沿うようにして、電離水素領域(HII領域)と呼ばれる明るいピンク色の輝きが点在している。これらはすべて若く高温の星が放つ紫外線によって水素ガスが電離し、光を放っている場所である。こうした領域は「星のゆりかご」と表現されるほど活発な星形成の現場であり、銀河の進化を理解するうえで極めて重要な観測対象となっている。
ハッブル宇宙望遠鏡は、可視光から紫外線まで幅広い波長で観測でき、若く高温の星が放つ紫外線を直接捉えることで、これらの星形成領域を明確に浮かび上がらせることができる。表面輝度が低く、肉眼では見えにくいNGC 5068をこのように詳細に観測できるのは、ハッブル宇宙望遠鏡の高度な観測能力があってこそである。一方、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は赤外線観測に特化しており、宇宙塵に遮られにくい波長で星形成領域の奥深くまで透視することができる。ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データは、近傍銀河におけるガス集積と星形成の関係を理解する研究の一環として取得されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡のデータと組み合わせることで、星が生まれる現場をより立体的に理解する道が開かれたと考えられる。
複数の宇宙望遠鏡を用いた多波長観測体制の構築と継続的な運用は、宇宙科学インフラの充実を示すとともに、それを支える関連産業の技術水準の高さをも物語っている。高精度の光学機器、精密な冷却システム、高度なデータ処理システムといった要素技術は、地上の精密機器産業とも通じる課題であり、宇宙科学の進展に伴う要素技術の革新は、製造業全体への波及効果を持つ可能性がある。星形成の仕組みを解き明かす観測が進むことは、単なる天文学的な知見に留まらず、宇宙産業全体の技術基盤拡張につながる意義を有している。
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出典:sorae

