“灯台パルサー”周辺の磁場構造を詳細に分析 NASAのX線偏光観測衛星「IXPE」が観測
イメージ NASAの専門衛星IXPEが、パルサー「PSR J1101-6101」周辺の磁場を直接測定することに初めて成功した。この「灯台パルサー」と呼ばれる中性子星の周囲における高エネルギー粒子の流れと磁場構造が、観測データによって検証されたという点で、宇宙プラズマ物理の研究に大きな前進をもたらす成果である。
パルサーは太陽程度の質量が直径20km程度に圧縮された中性子星で、超大質量星の超新星爆発によって残された中心核である。この天体は自転に伴う規則正しい電磁波パルスを放つ特徴を持つ。研究対象の「灯台パルサー」は毎秒16回という極めて高速で自転しながら秒速990kmで移動し、年齢は約6万3000年と推定されている。X線で観測すると、このパルサーの周囲には2つの構造が見える。1つは約1分角で生まれ故郷の超新星残骸を指す「トレイル」と呼ばれる尾状構造であり、もう1つはそれに垂直な方向へ数パーセク(1パーセク約3.26光年)にわたって伸びる「フィラメント」である。
パルサーから吹き出した高エネルギー粒子がバウショック(弧状衝撃波)を形成し、一部の粒子が銀河の磁場に沿って流れ出すことでフィラメントが生成されるという理論が提唱されていたが、磁場の実測は不可能とされてきた。IXPEはX線の「偏光」を観測することでこの課題を解決した。偏光とは電磁波の振動方向が特定方向に揃った状態を指し、その度合いから磁場構造を推測できる。2025年5月~6月の約18日間の観測データを解析した結果、フィラメント部分の磁場がその軸に平行に整列していることが明らかになり、偏光度は約55%に達した。これにより、高エネルギー粒子が銀河の磁場に沿って規則的に流れ出しているとする理論が裏付けられると同時に、従来のモデルが想定していたより磁場の乱れが弱いことが示唆された。
トレイル部分の分析からは予期しない複雑性が浮かんだ。X線観測では磁場がトレイルの軸に平行であったが、電波観測では磁場がトレイルの軸にほぼ垂直であることが判明した。このX線と電波での大きな食い違いは、パルサー周辺が複雑な構造を持つこと、異なるエネルギー領域で異なる粒子加速メカニズムが同時に働いていることを初めて直接的に示す証拠となった。多波長観測による現象解析の重要性を実証するものである。
この成果は基礎科学の領域に限定されない。極限物理条件下での複雑現象を理解し、多波長データを統合して解析する手法は、将来の宇宙機器設計に直結する。日本の衛星メーカーや計測機器メーカーにとって、こうした観測成果は次世代の宇宙科学ミッションにおけるセンサー開発やデータ処理システムの設計における参考知見となる。今後、さらに長時間の観測を通じて磁場構造がいっそう詳しく解明されれば、宇宙プラズマ物理の理解が深まり、それが次世代の宇宙探査機器へと応用される可能性がある。
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出典:sorae





