NASA天文衛星「スウィフト」の軌道上昇を行う宇宙機「LINK」ミッション継続し接近段階へ
イメージ スウィフト軌道上昇ミッションの宇宙機「LINK」は、7月下旬の姿勢制御トラブルを乗り越え、ソフトウェアアップデートにより安定を取り戻し、8月中旬から対象衛星への接近に向けた次段階へと進む。NASAが実施するこの軌道上昇ミッションは、20年以上の運用で高度低下に直面する観測衛星の延命を図るもので、宇宙機どうしのロボットアームによる把持という高度な技術実証の場ともなっている。
スウィフトは2004年の打ち上げ以来、ガンマ線バースト観測を続けてきた重要な天文衛星だが、軌道変更能力を持たない設計のため、希薄な大気との摩擦で高度が絶えず低下していた。この傾向は2024年の太陽活動極大期で加速した。太陽が活発になると地球の上層大気が膨張し、上空での空気抵抗が増すため、スウィフトの高度低下ペースは予想より早まったのである。そこでNASAはKatalyst社と契約し、独立した宇宙機「LINK」を使った軌道上昇ミッションを計画。2026年7月に打ち上げられたLINKは、打ち上げ直後からスウィフトへの接近準備を進めていた。
しかし7月下旬、LINKは毎秒約9度という多軸回転に陥った。通信も不安定になり、ミッション中断の可能性も懸念された。対応に当たったKatalystのチームは、LINKが搭載するホールスラスター(電気推進システムの一種)を繰り返し噴射することで回転を段階的に抑制する戦略を採った。7月31日時点で毎秒4度未満、8月6日には毎秒約1.47度まで低減させ、その後新たな姿勢制御アルゴリズムをアップロードすることに成功した。この対応で消費した推進剤は100g未満に留まり、本来のスウィフト軌道上昇に必要な燃料は温存されている。
今後LINKはスウィフトとの軌道を精密に合わせた上で、ロボットアームでスウィフトの主要構造を把持し、ホールスラスターの推力でスウィフトを高い軌道へ押し上げる計画である。スウィフトは現在高度約347kmで飛行しており、LINKが作業可能な高度300kmまでにはまだ時間的余裕がある。このミッション成功は、老朽化した衛星の延命を可能にする技術として、今後の宇宙運用の新たな選択肢を示唆している。
宇宙機同士がロボットアームで接触・把持する技術は、従来は大型宇宙ステーション建設時などの限定的な場面でしか実現されてこなかった。LINKによるスウィフト救出の成否は、独立した市販の宇宙機でこの技術を実装できるかを示す重要な試金石である。この実績が確立されれば、衛星寿命の延長や宇宙デブリ除去など、宇宙産業の広範な課題解決に向けた新しい事業領域が開かれる可能性を持つ。日本の部品・装置サプライヤーにとっても、衛星把持用ロボットアームや高精度な姿勢制御システム、微小推力推進器など、こうした軌道上サービス機体に搭載される機器・部品の需要が拡大する可能性がある。同時に、宇宙機どうしが動的に接近・接触する環境では、衝撃耐性や真空環境での耐久性、精密な寸法公差など、従来以上に厳格な品質基準が求められる。
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出典:sorae





