火星・北極域の氷は従来の推定よりも塵が少ない? 地球の雪氷の研究手法を応用して分析
イメージ 火星の北極付近に露出した水の氷に含まれる塵の割合を見積もり直した研究が、学術誌「npj Space Exploration」に掲載された。Pari Mohan氏(エディンバラ大学)とAditya Khuller氏(ワシントン大学応用物理研究所)によるもので、塵の含有量は質量比で3%未満と、従来の推定を大幅に下回る結果が示された。
氷に混じる塵は、氷を暗くして太陽光の反射の仕方を変えるため、火星の気候に影響を与えるとされる。塵を多く含む氷ほど温まりやすく、火星ではより速く気化すると指摘されている。火星の氷には過去の気候の記録が残ると考えられ、生命の痕跡を探る手がかりにもなりうるため、含有量の見積もりは基礎的な重要性を持つ。ところが従来は、表面の氷の塵が最大で約25%(質量比)とする見積もりもあり、研究者の間で見解が分かれていた。
今回の研究で注目されるのは、分析手法の選び方である。これまで主流だった手法は月の土壌を調べるために開発されたもので、Khuller氏が地球で正確さを確かめたところ、結果に食い違いが見られたという。そこで研究チームは、地球の雪と氷の分析で数十年にわたり実績のある手法をもとに、火星の氷を分析し直した。データには火星を周回する探査機のものと、2008年に北部へ着陸したNASAの探査機「Phoenix(フェニックス)」が掘った溝で露出した氷などが使われ、北緯65度以上の6か所で氷の光の反射の度合いが解析された。
季節による明るさの変化も明らかになった。Khuller氏によると、冬に生じる霜はより多くの塵を含み、火星の夏には霜が消えて、よりきれいで古い氷が現れるという。地球の氷では、塵を含んだ水のたまり場に夏になると多くの微生物がいることがあり、両惑星に似た層があることから、Khuller氏は生命の有無の違いに関心を示している。研究チームは今後、改良した手法を火星の他の地域にも適用する考えだ。
宇宙産業やサプライチェーンの観点では、今回の成果が直接的な部品需要を生むものではないと考えられる。ただ、極域の氷の性質は水資源の利用可能性や探査計画の前提条件に関わるため、将来のミッション設計の見直しにつながる可能性がある。日本の製造業にとっては、低温で微粒子が舞う極域で動く掘削機構やサンプル採取装置、塵の侵入を防ぐシールや光学センサーなどに、要求条件がさらに厳しくなる可能性がある。地上の試験装置や分析機器の精度基準が、地球の雪氷研究の手法と結びつけて見直される動きも考えられ、計測機器や素材を手がける企業が関わる余地はあると考えられる。
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出典:sorae



