巨大なブラックホールが噴き出させるジェットは銀河で新たな星が誕生するのをさまたげる?
イメージ インド・ラマン研究所のNamrata Roy氏らの研究チームは、銀河中心の超大質量ブラックホールが噴き出すジェットが、銀河の周囲に広がるガスにどう影響するかを調べ、その成果を学術誌「The Astrophysical Journal Letters」に発表した。ジェットに近い方向で、ガスが強く赤い光(Hα線)を放っていることが確かめられた。
銀河の周囲に広がる「銀河周辺物質」は、冷えて銀河に落ち込めば新たな星の材料になる。ところが星形成を終えた大質量の銀河では、低温のガスが残っていても長期間にわたって星が生まれない。論文は、ガスが冷えすぎないよう温め続ける仕組みが関わっている可能性を挙げており、その候補として注目されるのがジェットである。ただし、ジェットのエネルギーがガスにどう届くのかは、これまで詳しく分かっていなかった。研究チームは、ジェットを持つ300以上の銀河を調べ、Hα線がジェットに近い方向でははっきり現れ、離れた方向ではみられないことを示した。近い方向の明るさは、通常の銀河周辺と比べて約100倍に達するという。一方、マグネシウムの分布には方向による明確な差がみられなかった。このことから研究チームは、低温ガスはもともと銀河の周囲に広く存在しており、ジェットの進路上にある一部が圧縮されたり電子を剥ぎ取られたりして光っていると考えている。
光が特に強かったのは、ジェットとガスが最初に出会うと考えられる銀河に近い場所と、電波ローブ付近の2か所だった。この結果は、ジェットのエネルギーが銀河全体に一様に広がるのではなく、通り道に集中して注がれている可能性を示すものだと考えられる。ただし論文自身も、ジェットがいつ、どこで、どのようにして低温ガスへエネルギーを注ぐのかは、シミュレーションとの比較で突き止める必要があると指摘している。今回の成果は解明に向けた一歩であり、答えが出た段階ではない。宇宙産業の受発注に直結する話ではないが、こうした銀河規模の現象を捉えるには、高感度の観測装置とその光学部品や検出器の精度が欠かせない。観測技術の進歩は、製造業の精密加工の水準に支えられていると考えられる。
日本の製造業・部品サプライヤーにとっては、直接の商機よりも中長期的な需要の変化として捉えるのが現実的だ。例えば、微弱な光を捉える検出器の感度を左右する材料や、温度変化による変形を抑える構造部材、長期運用に耐える光学系の精密加工などが、将来の関わりの候補になりうる。ただし本記事は観測研究の成果を報じたもので、個別の装置計画や調達に関する情報は含まれていない。今後の観測計画の動向を追うことが、参入を判断する材料になると考えられる。
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出典:sorae



