8月12日皆既日食、市民科学者ら観測へ
8月12日、スペイン、アイスランド、グリーンランドの上空で皆既日食が起こり、太陽のコロナ(外層大気)が観測される。この観測を支える存在が、アメリカの市民科学イニシアティブ「Dynamic Eclipse Broadcast Initiative(DEB)」だ。南イリノイ大学カーボンデールの専門家が指導し、NASA と国立科学財団から資金を得るこのボランティアネットワークは、相次ぐ皆既日食を観測地として、太陽の謎を解き明かそうとしている。
DEBの観測体制は 2024 年の米国での皆既日食で実績を示した。全米の日食帯に沿って 80 以上のチームが配置され、太陽のコロナの構造と動態を 49 分間にわたって追跡した。その映像はほぼリアルタイムでアップロードされ、ライブストリーム配信されて、アメリカの各地で日食を見られなかった人々にも観測の成果を届けた。この取り組みは複数のエミー賞を獲得し、観測データは査読済みの科学論文として天体物理学の学術誌に掲載される予定だ。観測に用いられる機器は、望遠鏡、カメラ、マウント、コンピューターを含めて約 1,800 ドルという比較的低い予算で構成される。ボランティアネットワークの強みは、複数地点での同時観測にある。一つの地点が曇天に見舞われたり通信が遮断されたりしても、隣接するチームが観測を継続できれば、データの欠損を防げるのだ。平時にボランティアらは太陽フレアや小惑星、系外惑星のトランジット観測にも従事し、太陽の活動を継続的に記録している。
今年 8 月 12 日の日食では、DEBはスペイン北西部のレオンと、その南東約 150 キロメートルのヴァロリア・ラ・ブエナに 2 つのチームを配置する予定だ。ボランティアが収集したデータは、2024 年の観測と同様にリアルタイムでサーバーにアップロードされ、NASA のライブストリーム中継に組み込まれる。しかし今回の観測にはもう一つの重要な役割がある。2027 年 8 月 2 日に起こる「21 世紀最長の皆既日食」に向けた試行的な運用と位置付けられているのだ。2027 年の日食は最大 6 分 23 秒間続き、2026 年の 2 分 18 秒を大きく上回る。DEBはこの壮大な機会に向けて、米国とアフリカの観測者を含む 27 チームの配置を計画している。実現にはロジスティクスと資金の確保、加えて両大陸からのボランティア確保が不可欠であり、プロジェクトチームは秋からの本格的な募集活動に向けて準備を進めている。
太陽のコロナを理解することは、太陽風や磁場変動といった宇宙天気予測につながり、衛星通信や電力網への影響評価に役立つと考えられる。こうした観測から得られるデータは、宇宙環境で動作する機器や部材の設計指針となる。日本の部品・装置・素材メーカーにとって、こうした国際的な観測プロジェクトは、精密観測機器や宇宙環境対応部材の供給先として位置付く可能性がある。同時に、太陽活動と宇宙天気の関係が詳細に解明されるにつれ、衛星や探査機の開発に求められる部材の仕様も進化していくだろう。宇宙産業全体の信頼性向上に貢献するプロジェクトの進展を注視する価値がある。
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