アルテミス2号のコッホ飛行士、現役宇宙飛行士の任務を離れ11月1日付でNASA副主任技師代行へ
アルテミスII で有人月周回を果たしたクリスティーナ・コッホが、11月1日付で NASA の副主任エンジニア代行に就任し、今後は宇宙飛行の任務に就く資格を持たない「マネジメント宇宙飛行士」に移ることが、10月13日の NASA 発表で明らかになった。コッホは国際宇宙ステーションに328日間滞在した経験があり、女性による宇宙ミッションとしては最長の記録を持つ。現役の飛行任務から外れて組織の技術統括に就く今回の人事は、宇宙飛行士としての経験をエンジニアリングの現場に還元する意図があると読める。
背景には、アルテミスII の乗組員4人の進路がそろって地上の役割へ向かっている事情がある。司令官のワイズマンとパイロットのグローバーは先月「名誉宇宙飛行士(エメリタス)」になり、助言や後進の指導が中心となった。グローバーは母校のカリフォルニア・ポリテクニック州立大学(Cal Poly)で常勤として働く予定である。カナダ宇宙庁のハンセンも予備役のカナダ空軍に移ることが先月正式になった。コッホの後任は現副主任エンジニアのキャサリン・ヴァン・フーザーで、10月21日に35年以上の勤務を終えて退職する。コッホは電気工学と物理学の学位を持ち、ゴダード宇宙飛行センターで電気エンジニアとしてキャリアを始めた人物であり、組織の技術面を統括する人選として妥当だと考えられる。
今回の人事が示すのは、月周回を実際に経験した乗組員の知見が、飛行の現場から組織の技術統括へと移りつつあることだ。記事によれば、次のアルテミスIII は2027年に低軌道でのドッキング試験として予定され、アルテミスIV は2028年に月の南極付近へ着陸する計画だという。有人月面探査が本格化するこの段階で、機体の信頼性や運用準備を見る立場に飛行経験者が加わることは、開発の進め方や判断の重みに影響すると考えられる。ただし、アルテミスIV の搭乗者はまだ発表されておらず、今回の人事が今後の乗組員選定にどう関わるかは記事からは読み取れない。
日本の製造業にとって、この人事が直ちに発注や仕様の変更につながるわけではない。ただ、NASA のエンジニアリング組織は、技術的な監督や飛行準備の基準を決める中心にあたる。記事でアイザックマン長官が挙げた月面拠点の建設、宇宙での原子力電源の開発、そして火星に向けた能力の整備が進めば、部品や装置に求められる信頼性と検証の水準はさらに厳しくなっていくと考えられる。部品・装置・素材を手がける企業にとっては、この組織がどのような判断基準を示すかを継続して追い、要求仕様の変化に早めに備えることが、現実的な関わり方になるだろう。
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