2011年9月10日、NASAが月の重力分布測定ミッション「GRAIL」を打ち上げ
2011年9月10日、NASAは月の重力分布を詳細に測定するためのGRAIL(重力回復・内部測定研究室)という探査機システムを月に向けて打ち上げた。このミッションによって、月の表面下に存在する異常な質量分布「マスコン」と呼ばれる高密度領域が、数十億年前の隕石衝突によって形成されたことが実証されたのである。
月は地球から見ると一様な灰色の岩の球に映るが、実際には月の各地点で重力の強さが著しく異なっている。この不均一性は月面下に埋蔵された高密度物質によってもたらされており、それがマスコンと呼ばれるものである。こうした月面下の異常な質量集中が月軌道を周回する宇宙機に及ぼす重力的影響を詳細に研究することが、GRAILミッションの主要な目的だった。ミッション本体は「Ebb」と「Flow」という2つの同型の双子宇宙機で構成され、この2機が月の周りをタンデム配置で飛行することで、重力場の微細な変化を極めて正確に計測できるという工夫がなされていた。両機はフロリダ州ケープカナベラルからデルタII型ロケットで同時に打ち上げられ、約4ヶ月間の飛行期間を経て月軌道に投入された。その後、2機は月面から30マイル(約50キロメートル)という極めて低い軌道を周回し、互いの距離は109マイルから140マイル(175キロメートルから225キロメートル)の範囲に保たれながら観測を続けた。
2つの探査機は月重力測定システム、無線ビーコン、そして学生プロジェクトから生まれた「MoonKam」という月面観測カメラの3つの観測機器を搭載していた。これらの機器による極度に詳細な重力マッピングの結果、マスコンの分布と性質が初めて明らかにされた。それまで天文学者の間で長らく推測されていた仮説が確認され、月のマスコンは月の内部がより高温だった太古の時代に、大規模な小惑星や彗星の衝突によって形成されたことが実証されたのである。この発見は月の進化過程を理解するうえで極めて重要な知見をもたらし、宇宙科学における月研究の新たな段階を切り開いた。ミッションは約9ヶ月間にわたる観測活動を行った後、2012年12月17日に両機を月面北極付近のクレーター縁に意図的に衝突させることで終了した。これは燃料枯渇により低軌道の維持が不可能になったためだが、同時にアポロ月面着陸遺跡などの歴史的遺産を守るための計画的な措置でもあったのである。
月の重力場に関する正確で詳細な知識は、今後の月面探査や資源開発といった人類の月への本格的な進出を見据えた計画において、極めて重要な基礎情報となる。月軌道衛星や着陸機の軌道計算、月面での各種機械装置の安定性確保、あるいは採掘活動における精密機器の動作には、こうした月の重力分布に関する正確な情報が不可欠である。日本の部品メーカーやセンサー開発企業も、月探査プロジェクトの進展に伴い、月環境で確実に動作する精密部品や計測装置の開発を求められる可能性がある。既に月面着陸を目指すプロジェクトが各国で進行する中で、月の物理特性に適応した信頼性の高いシステムとコンポーネントの供給が、日本の製造業にとって今後の重要なビジネス機会になり得るのである。
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