月面は宇宙飛行士を“歩く高電圧コンデンサー”に変え、宇宙船に誤って放電させるおそれ
NASAが月面で宇宙飛行士の身体に蓄積する静電気を安全に逃がす技術を公募する「Lunar Grounding Challenge」を開始した。
NASAは、月面に降り立った宇宙飛行士が「歩く高電圧コンデンサー」になり、着陸機や宇宙服を傷つける放電を起こすリスクを抑えるため、産業界からアイデアを募っている。賞金は15万ドルで、応募締め切りは1月15日。月の南極付近に2028年、アルテミス4号または5号で宇宙飛行士の足跡を再び残す計画があり、その前に解決しておく必要がある課題として位置づけられている。
背景には、月面特有の帯電メカニズムがある。摩擦によって電荷が移る「トライボチャージング」と、周囲のガスから電荷を受ける「プラズマ帯電」の両方が、シミュレーション上で宇宙服に電荷を蓄積させると見られている。特に影の中や永久影になるクレーター内では、電子が過剰になって宇宙服が強く負に帯電しやすい。着陸機がわずかに正に帯電している場合、船外活動から戻った宇宙飛行士が機体に近づいた瞬間に放電が起きる恐れがある。NASAは、火花が宇宙服の外被を傷つけたり、酸素が充満する船内で火災を招いたりするリスクを挙げている。さらに、月の浮遊塵や宇宙服に積もった塵は火花の飛距離を延ばすとされ、真空中の想定より大きな隙間を放電が飛ぶ可能性があると指摘している。
今回の課題が求めているのは、宇宙飛行士が機体に触れる前に、宇宙服ごと安全に電荷を逃がす仕組みである。質量・体積・消費電力のいずれも小さく、月面の激しい温度差の中でも動作することが条件に含まれる。加えて、最大10日間にわたる最大4回の船外活動を通じて機能し続けることも求められている。つまり、単発で効く装置ではなく、長期の月面滞在を前提にした耐久性と省電力性が問われている。NASAは実用化の時期を示していないが、2030年代に長期的な月面基地の運用を見込んでいることから、その前段として技術の成熟が求められるとみられる。
宇宙産業全体にとって、この公募は有人月面探査の安全設計が「宇宙服と着陸機の接触まで含めた電気的な設計」へ踏み込んでいることを示している。月面では塵と真空と影が重なるため、地上の静電気対策をそのまま持ち込めない。機体の設計だけでなく、宇宙服の材料や表面処理、地上でのミッション手順まで含めた総合的な対策が必要になるとみられ、宇宙機器のサプライチェーンでも、材料・部品レベルの帯電制御への関心が高まる可能性がある。
日本の製造業にとっては、この分野で部品や素材を提供する余地がある。例えば、小型で低消費電力の放電回路を構成する電子部品、塵の付着を抑える表面コーティングや導電性素材、極低温から高温までの温度変化に耐える絶縁材などが考えられる。NASAの公募は産業界の提案を広く受け付けているため、単独での応募に加え、大手メーカーや研究機関と組んで部品単位で参加する道もあると考えられる。宇宙向けの品質管理や信頼性試験の経験を持つ企業であれば、要件の厳しさを実務に結びつけやすいだろう。
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出典:Space.com / 自動翻訳のため訳文が不正確な場合があります




