スウィフト軌道上昇ミッション、姿勢制御に問題発生
NASAのガンマ線観測衛星「スウィフト」の軌道リブースト(上昇)を担うKatalyst Space Technologies社の無人宇宙機「リンク」が、打ち上げから約1ヶ月後に姿勢制御の異常に見舞われた。7月28日時点で、機体が複数軸の回転運動(マルチアクシス・スピン)に陥り、搭載システムの通信が一時的に途絶しているという状況にある。
リンクは7月3日にペガサスXLロケットで打ち上げられ、軌道減衰中のスウィフトとのドッキングとその後の軌道上作業により、スウィフトの軌道を引き上げるという高リスクなミッションに投入されていた。スウィフトは低地球軌道(高度約350km)から徐々に降下しており、年末または来年初めに大気圏への再突入が予測されている。この再突入を回避するには、スウィフトが高度300km以下に降下する前にリブースト・ミッションを完了する必要があり、NASAはそのタイムリミットを今年10月と想定していた。つまり、時間的にかなり制限されたミッションであり、失敗時の回収機会がない。Katalyst Spaceに対しては3000万ドルの契約を発注し、高度な技術的チャレンジに対応する民間企業の能力に賭けたものである。打ち上げから現在までの進捗は、7月15日には姿勢制御が安定し、通信異常も解決したと発表され、さらに7月24日には電動スラスタの試験運用を行い、2回の燃焼で機体の高度を約2km上昇させることに成功していた。だが、その後の試験過程で新たな問題が生じたと考えられる。
問題の詳細は、リンク搭載の反応車輪(リアクション・ホイール)3個のうち2個が機能していないこと、および反応制御スラスタ(姿勢制御用微小推力ロケット)の一部が正常に動作していないことにある。これにより、宇宙機が意図しない多軸回転に陥り、搭載カメラやアンテナの指向が乱れ、通信システムが一時的に遮断されたのである。ただし、通信系、推進系、ロボティクスシステムの主要部は正常に機能していると会社は報告している。Katalyst社はこの問題に対し、ジンバル付きの電動推進システムを使用して回転速度を低減させ、機体を安定化させる方針を示しており、既に数回の推進バーン(エンジン操作)を実施して効果が現れているという。その後、数週間のうちに制御システムのソフトウェア更新を行い、スウィフトとの接近・ドッキングおよび軌道上での作業に必要な精密な姿勢制御能力を回復させた上で、本ミッションを再開する計画である。会社は「依然としてミッション完遂の実現可能性がある」との見方を示している。
このようなトラブルは、軌道上での複雑な機械的操作を伴う衛星リブースト・ミッションがいかに技術的に難しいかを示す事例である。ロボティクスシステムを使用したドッキングと軌道上での作業、高精度の姿勢制御、および電動推進システムなど複数の先進技術が不可欠であり、同時にこれらシステムの統合と軌道上での信頼性確保の困難さが増してくることをも意味している。衛星の寿命延伸が重要な課題となる中、日本の衛星システム企業、ロケット関連メーカー、電子制御機器サプライヤーは、こうした次世代的なミッション要件を見据え、より高い信頼性を備えると同時に自動診断・復旧機能を搭載した部品・モジュール・システムの開発ニーズが今後さらに高まると考えられる。衛星の軌道上サービス分野において、信頼度の高い機械・電子部品の重要性がこのように実証されることは、日本の精密加工・制御機器産業にとっての新たな事業機会を示唆しているといえよう。
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