NASA、「月面5G通信」開発で米Modulate Spaceと契約 2028年に実証へ
イメージ NASA がテキサス州のモジュレート・スペース・コーポレーション(Modulate Space Corporation)に、月面での 5G・Wi-Fi 統合通信システムの開発を発注した。契約額は約 60 億円で、2028 年の月面での実証試験を目指すプロジェクトである。
月面基地の運用が現実のものとなりつつある中で、信頼性の高い通信インフラの構築は最優先課題として位置づけられている。本契約では、「5G ネットワーク・イン・ア・ボックス」と呼ばれるコンパクトな一体型システムの開発を進める計画だ。スケジュールとしては、2026 年 10 月から 2028 年 1 月まで地上でのラボ実証を実施し、その後 2028 年 11 月から 12 月にかけて実際に月面での飛行実証を行う予定である。開発対象となるシステムは Wi-Fi 6 規格に対応した 5G 通信機能を備え、将来の技術進化に対応できる拡張性と、国際標準規格への準拠を重視した設計になると考えられる。NASA グレン研究センターが主導する本プロジェクトは、月面基地の各種運用を支援するための統合的な通信基盤を確立し、月面での活動を遠隔から監視・制御できる環境を整えることを最終的な目的としている。
月面通信システムの開発が産業的に重要である理由は、単なる技術的な実証にとどまるものではない。月面での長期滞在、ロボットやドローンの遠隔操作、センサーデータ収集、複数の拠点間の情報伝達といった、あらゆる基地活動が信頼性の高い通信インフラに依存しているからだ。本契約を通じた実証プロセスで得られるハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアに関する技術知見は、今後の月面通信技術の進化と、月面環境に適応した柔軟なシステムアーキテクチャの開発に直結する。また実証により取得される運用性能に関する知見は、複数の月面ミッションが並行して立ち上がる際に、通信システムの統一的な選定基準や統合方法の参考となる可能性が高い。月面活動の拡大に伴い、標準化された通信インフラの需要は増していくと考えられ、本プロジェクトはその実現に向けた重要なターニングポイントとなるだろう。
日本の製造業にとって、月面通信インフラの構築は新たなサプライチェーン機会をもたらす可能性がある。5G・Wi-Fi 対応の通信機器には、高周波部品、マイクロ波アンテナ、電源管理・制御システム、信号処理モジュールなど多くの精密部品・デバイスが組み込まれる必要がある。加えて月面の厳しい環境条件である真空、急激な温度変化、放射線に耐える素材、電子デバイス、実装・接合技術の開発需要も急速に増すと考えられる。本契約の実証プロセスを通じ、月面向け通信機器が満たすべき仕様、信頼性要求水準、環境耐性基準が徐々に明確化されていくことになる。それに応じた部品・素材開発を検討する企業にとって、本プロジェクトの進捗状況と実証結果は、今後のビジネス機会を見据える上で重要な指標として注視する価値がある。国際的な月面ミッション拡大への対応を視野に入れ、早期から月面環境対応の要素技術開発に着手する動きが加速する可能性があり、国内の部品・素材メーカーの戦略立案において本動向の把握が急務となるだろう。
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出典:Space Media




