Amateras Space、産学連携で国産月面宇宙服の実現を目指す「次世代宇宙服コンソーシアム」を発足
イメージ Amateras Space主導の産学連携コンソーシアムが発足し、2035年までに日本国産の月面宇宙服を実現する取り組みが本格化した。従来は米国や欧州の寡占状態にあった宇宙服分野において、日本の製造基盤を活かしたものづくりの参入が始まる動きである。
月面での活動を支える船外用宇宙服は、真空環境と極度の温度差から宇宙飛行士の生命を守る「小さな宇宙船」と表現される。呼吸から生命維持まで、活動環境のあらゆる要素を制御する極めて高度な装備であり、その開発は単なる衣料品製造ではなく、複雑なシステム設計を必要とする。このコンソーシアムには、気密構造と動きやすさを両立させるドライスーツ製造技術を持つモビーディックと、光造形や真空注型といった迅速な試作検証技術を保有するクロスエフェクトが参画する。どちらも既存の産業分野で磨かれた技術を、宇宙環境という未知の領域へ応用しようという戦略的な発想である。研究開発を指揮する田中邦彦氏はカリフォルニア大学サンディエゴ校への留学経験とNASAでの研究開発に携わった経歴を持ち、国際的な知見が研究体制に組み込まれている。Amateras Spaceが構想策定からシステム統合、事業化推進まで主導する体制により、学術と産業の連携が具体的に動く仕組みが整えられた。
この取り組みが強い意義を持つ背景には、今後の月利用計画の加速がある。民間企業を含む月着陸機の開発が世界的に進む中、宇宙飛行士の活動能力を高める装備の自給体制を持つことは、宇宙開発の自立性確保に直結する課題である。同時に、資源採掘やベースキャンプの建設など、月面での長期的な活動を実現するには、信頼性の高い月面宇宙服が不可欠な要素となる。加えて、コンソーシアムが開発を進める「ONZO」と呼ばれるインテリジェンス基盤は、宇宙飛行士の生体情報と動作情報、周辺環境や機器の状態といった外界情報をAIで統合・分析し、健康管理やリスク予兆検知、ミッション運用を支援する仕組みだ。これは宇宙服に限定されず、月面ローバーや居住施設といった月面資産全体に横断的に活用されることが想定されている。日本が開発する宇宙服がそのシステムの一部となることの技術的・経済的な意義は決して軽くない。
日本の部品・素材・装置メーカーにとって、このコンソーシアムは新たなサプライチェーン構築の機会を意味する。気密パッキンから耐熱素材、センサー、制御回路、高精度加工部品に至るまで、宇宙服というシステムには多くの要素技術が不可欠である。また、ONZOのようなシステム統合の取り組みが進展すれば、ヘルスケアや防災、消防・潜水装備といった地上産業への応用も想定されており、宇宙開発投資が複数の産業分野に波及する効果が期待できる。月面という最終納入地を見据えた、日本の産業界全体の本格的な参入の道が、現実的な形をとり始めているのである。
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出典:Space Media




