JAXAと産総研、AIでSAR衛星データを解析するための基盤モデルを公開
イメージ JAXA と産総研は 2026 年 7 月 31 日、地球観測衛星「だいち2号」から得られた合成開口レーダー(SAR)データを用いた AI 基盤モデルを公開した。この基盤モデルは、雲を貫通して地表の状態を観測できる SAR 画像の膨大なデータから自動的に有用な特徴を抽出する仕組みを、研究機関や企業が自由に活用できるようにしたものである。これにより、衛星データを用いた解析がこれまでより格段に容易になると期待される。
JAXA と産総研は 2018 年に衛星データの AI 解析に関する連携協定を締結し、今回の公開はその約 8 年間にわたる共同研究を経た到達点である。だいち2号に搭載された PALSAR-2 センサは日本全土を定常的に観測しており、取得した 3 メートル高解像度の SAR データを学習用に活用した。産総研が保有する大規模 AI クラウド計算システム「ABCI」の計算資源を駆使してこれらのデータを処理することで、日本全土に特化した基盤モデルの構築が実現した。公開されたのは、SAR 画像から自動的に特徴を抽出するエンコーダ部分と、土地利用・土地被覆分類といった具体的な応用に特化させたモデル、そして実装するためのコードである。
このモデル公開の背景には、大規模言語モデルに代表される基盤モデル技術が急速に普及する中で、衛星データ解析の民主化を進める必要があるとの判断がある。従来、衛星データの活用には専門的な技術知識と膨大な計算リソースが必須であり、結果として限られた大規模機関のみが実用的な解析を実施できていた。しかし公開された基盤モデルを活用すれば、個別のニーズに応じた追加学習を通じて、より多くの組織が短期間で実用的なモデルを構築できるようになる。こうした変化は、衛星データをめぐる産業構造そのものに影響を与える可能性がある。その結果、森林資源管理や災害状況把握、インフラ監視といった様々な分野での衛星データ活用が大きく加速すると見込まれている。
日本の部品・装置・素材メーカーにとって、この基盤モデルの普及は新たなビジネス機会をもたらす可能性がある。衛星データ解析と AI 推論に対応したセンサ、データ処理用の電子機器、計算システムの構成部品といった様々な産業用部品への需要が増加する見込みだ。とくに衛星データ解析の応用分野が拡大すれば、それを支えるハードウェア層・ミドルウェア層の技術や部品に対する要求仕様も高度化していくと考えられる。また、SAR センサそのものの性能向上や小型化といった要素技術への投資も増える可能性がある。日本全土の観測データに基づく基盤モデルという「共通インフラ」が整備されたことで、それを活用する民間のエコシステムが成長し、最終的には関連する様々な産業への波及効果が期待されるのである。
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出典:Space Media





