水星の探査計画「ベピ・コロンボ」が最終接近段階へ
2018年10月の打ち上げから約8年間、99億km近い航路を辿ってきた欧州宇宙機関(ESA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の共同水星探査計画「ベピ・コロンボ」が、9月3日に推進モジュールの分離に成功し、最後の局面を迎えた。11月には水星周回軌道へ投入される予定であり、長期間の航行を経た探査機がついに観測を本格化させる段階が近づいている。
水星は太陽に最も近い惑星という厳しい環境にあり、これまで探査は米航空宇宙局(NASA)による2回のみという歴史を持つ。太陽付近の軌道へ到達するには、探査機の速度を大幅に低下させる必要があり、かつ灼熱環境での熱制御も極めて難しいからだ。ベピ・コロンボがこれまで成功させてきたのは、地球1回、金星2回、水星6回にわたる計9回のグラビティアシスト(重力航法)と、推進モジュールのイオンエンジンによる電気推進の組み合わせである。当初は2025年12月の到着を予定していたが、2024年に推進モジュールの電源系に不具合が発生し、イオンエンジンの出力低下を余儀なくされた。その結果、軌道計画を変更して約1年の延期を実施したものの、到着後の科学観測そのものへの影響はないとされている。
ベピ・コロンボは、ESAの水星表面・内部構造探査機「MPO」とJAXAの磁場・磁気圏観測機「みお」という2機で構成される複数衛星による同時観測は世界初の試みであり、水星の全体像を多角的に捉えることを目指している。現在のミッションが追求する謎は、水星が異常に大きな鉄の核を持つ理由、極域の永久影に氷が存在する理由、そして地球以外の岩石惑星で唯一、独自の磁場を持つ理由などである。特に水星の磁場に関する観察は大きな関心を集めており、みおによる長期間の磁場・プラズマ観測を通じて、この特異な磁場がどのように維持されているのかの解明が期待されている。こうした水星の謎の解明は、地球を含む太陽系全体がいかに形成・進化してきたのかを理解するための重要な手がかりになると考えられる。
日本の製造業にとっても、このミッションは無視できない意味を持つ。JAXAが担当する「みお」は、極限環境での長期間にわたる磁場観測という高度な要求に応える必要があり、その実現には国内のエンジン製造業や精密機器メーカーによる高信頼性部品の供給が不可欠である。また、複数機関による国際共同開発という枠組みのなかで、相互運用性や品質基準への対応も求められる。ベピ・コロンボの成功は、日本の宇宙産業技術の高さを示すとともに、極限環境での部品・素材の信頼性が宇宙探査の成否を左右することを改めて示している。
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出典:WIRED.jp