“量子が主役にならない”化学反応を! 約80の量子のアイデア集った「NEDO QC Challenge」とは?
日本政府が量子コンピューターの実用化を加速させるため、社会課題解決をテーマにした大型懸賞事業「NEDO QC Challenge」を展開しており、約80のプロジェクトが研究開発を進めている。経済産業省が設置した量子産業室と、国立研究開発法人NEDOが主導するこのプログラムは、総額約2億円・優勝賞金4000万円という規模で、アカデミア・スタートアップ・企業・自治体など多様な参加者から課題を募集する取り組みだ。
量子コンピューター開発の国際競争は急速に進んでいる。各国ベンダーが相次ぎ性能ロードマップを更新し、暗号解読に必要な物理量子ビット数を削減する研究が加速している。国内でも富士通が超電導方式での量子ビット数更新を、NTTなどが光量子方式での100万量子ビット実機開発を進めており、日本成長戦略の重点項目において量子技術は3番目に位置するほどの優先度を得ている。このような政策的背景のなか、NEDOが推進するこのプログラムは、研究開発と実用化を結びつける「橋渡し」の役割を担っている。
発表されたプロジェクトの内容を見ると、製造業にとって実践的な課題が多く含まれている点が特徴だ。太陽光パネル配置の最適化から物流配送ルート・金融ポートフォリオの最適化、流体力学シミュレーション、超大規模無人航空機の飛行管理など、組み合わせ最適化問題が多くを占めている。これらは従来のコンピューターでは計算に膨大な時間を要する問題であり、量子コンピューターが活用できる領域として想定されている。さらに、学校給食の献立最適化やゲームバグの検出なども提案されており、非学術的な課題からの参加者も増えている。
このプログラムのユニークさは「量子が主役にならない」という設計思想にある。審査委員長の藤井啓祐京都大学教授は、実際の社会ニーズや課題が先にあり、その解決のために量子コンピューターをいかに活用するかという逆転の発想を重視している。技術仕様よりも実社会へのインパクトを提示することで、研究者が自然と必要な技術開発に向かうという考え方だ。この化学反応が次の大発見につながる可能性があると指摘されている。
日本の製造業・部品サプライヤーにとって、このプログラムは二つの観点で関わりうる。一つは、自社の最適化課題をプロジェクトチームに提示し、実装可能性を検証する契機となることだ。もう一つは、量子コンピューター関連企業や計算環境提供企業とのネットワークを構築する機会として機能していることであり、将来の技術応用に向けた知見獲得が期待できる。プログラムは秋の最終審査に向けて進行中であり、採択プロジェクトの動向が注視される。
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出典:WIRED.jp


