制約だらけの人工衛星作り。三菱電機が見直したのは“作る場所”だった
三菱電機が人工衛星の製造方法を根本的に見直している。従来は地上で完成させた衛星をロケットで打ち上げるという手法を前提としてきたが、同社は今「作る場所そのもの」を変えることで、衛星設計を大きく制約してきた軽さと強さのジレンマから脱却しようとしている。
人工衛星は、ロケット打ち上げの瞬間に極めて過酷な環境に置かれる。打ち上げ時には激しい振動と衝撃がロケット内部に伝わり、その力の大きさはスポーツカーの加速など比較にならない。これに耐えられるか否かは衛星の信頼性を左右する決定的な要件であり、三菱電機の鎌倉製作所では実際に打ち上げ環境を再現した巨大な振動試験機でこの試験を実施している。だが乗り越えるべき試練は振動テストだけではない。温度の急激な変化や真空環境など、宇宙という過酷な環境に耐えられるかの耐久試験が待ち受けている。
こうした試験をクリアするには、衛星をより頑丈に設計することが一見必要に見える。しかし宇宙開発には根本的なジレンマがある。部品を増やして強度を高めれば重量が増加する。一方でロケットで打ち上げられる重量には限界があり、衛星が重くなるほど狙った軌道に乗せるためのコストが跳ね上がる。重量が1kg増えるだけでも数十万から数百万円単位のコスト増加に直結することもあるという。つまり衛星には「壊れない強さ」と「できる限りの軽さ」を同時に実現することが求められ、この相反する要求の下で素材と構造の工夫を重ねてきたのが従来の設計アプローチだった。
三菱電機が研究する新しいアプローチは、この根本的な制約を「作る場所を変える」という発想で突破しようとするものだ。地上で完成させた衛星をロケットで打ち上げるという固定的な前提では、衛星に課せられる制約は変わらない。だが製造の場所を変更することにより、衛星に課せられる制約の性質そのものが変わる可能性がある。記事では具体的な技術は明かされていないが、このアプローチにより重量制約だけでなくサイズの制約も変わる可能性があるとされている。
日本の部品メーカーや素材メーカー、装置メーカーにとって、このような衛星製造方法の転換は新たな機会をもたらす可能性がある。現在のアプローチでは、軽量化と強度のバランスを地上で追求する必要があるため、採用できる材料や製造手法が限定される。だが「作る場所」を変えるという新しいパラダイムが確立されれば、これまでの厳しい制約下では採用しにくかった材料や加工技術の活用余地が広がることが考えられ、日本のサプライチェーンの多様性がその対応力として機能することになるだろう。
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出典:ギズモード・ジャパン



