遠隔地の鉄道や農地にも通信技術を提供へ。イギリスが衛星通信に関する16件のプロジェクトに1,300万ポンドを出資【宇宙ビジネスニュース】
イメージ イギリス政府が衛星通信技術の実用化に向けた大型投資を打ち出した。イギリス宇宙庁は2026年8月、衛星通信に関する16件のプロジェクトに1,300万ポンドの資金を提供すると発表している。これらのプロジェクトは欧州宇宙機関(ESA)の通信技術開発プログラム「ARTES」の枠組みで実施されるもので、超高速光通信から遠隔地の鉄道や農業まで、応用分野の幅は極めて広い。
具体的には、衛星運用企業のExobotics社は衛星間のデータ中継を高速化する光通信技術の実証に210万ポンドの支援を受ける。レーザー通信技術を手がけるArchangel Lightworks社は、毎秒100ギガビット以上の超高速レーザー通信システムを開発する予定で184万5,000ポンドが配分される。深宇宙通信では、Aalyria Technologies社が信号到達に数分から数時間を要する環境でも信頼性を保つネットワーク技術を手がけており、将来の月面ミッションを支えるインフラになると位置づけられている。一方、地上の生活に直結するプロジェクトも重視されている。スコットランドの鉄道会社ScotRailの路線に衛星通信機器を搭載し、通信の死角地帯にブロードバンドを提供する実証にはCGI社が42万8,000ポンドを受け取り、イギリス政府は本土全体の鉄道への展開を視野に入れている。また、農業センサーの開発を進めるFarmer Charlie社は、衛星と携帯通信を組み合わせた低価格のセンサーシステムで遠隔地の農村でも作物や土壌の監視が可能になると想定しており、来年夏の実用化を目指している。
このニュースの背景には、欧州が衛星通信市場での競争力維持を図る戦略がある。ARTESプログラムは、単独企業では実現困難な基礎研究から市場投入まで、一貫して支援する仕組みだ。捜索救助、遠隔医療、環境監視など多くの分野での応用を想定しており、その結果として宇宙ミッション向けの超高速通信技術と、鉄道や農業といった一般向けの用途が並行して開発されている。この多層的なアプローチにより、技術開発のリスク分散と市場創出を同時に実現しようとしている。
衛星通信の実用化が進むことは、宇宙産業全体のサプライチェーン構造に変化をもたらす可能性がある。衛星本体の製造だけでなく、地上局の構成部品、通信機器、センサーなど周辺機器の需要が拡大することが考えられる。特にレーザー通信システムや低価格センサーなど、技術的に高度な部品の供給が増えると予想される。日本の部品・装置・素材メーカーの多くは、これらのサプライチェーンに組み込まれる機会を持つと考えられる。レーザー光学部品、高周波部品、耐環境センサーなど、日本が得意とする領域の製品が採用される可能性は高い。さらに国際的な標準化の動きが加速すれば、規格への準拠を前提とした部品開発・調達が一般的になり、日本メーカーの競争環境は変わっていくだろう。衛星通信の実用化という流れを、サプライチェーン機会として捉える準備が、国内製造業には求められている。
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出典:宙畑




