SpaceXのAI事業の売上がStarlinkを超え黒字化。売上額を大きく上回る480億ドルを9か月で投資に回した2026年7〜9月期決算
イメージ SpaceXは2026年7〜9月期の決算で、AIの計算基盤を担うSI部門が四半期で営業黒字に転じ、売上ではStarlink部門を上回ったと明らかにした。全社の売上高は145億7,500万ドルで前年同期の約2.6倍に達し、Starshipによる衛星投入や外部からの受注も同時に進んだ。宇宙企業の決算でありながら、事業の重心がロケットや通信衛星からデータセンターへ移りつつあることを示す内容である。
背景として、SI部門の売上75億6,000万ドルは前年同期の約9倍で、AIの計算基盤を貸し出すクラウド契約の稼働と、8月に買収したCursorの寄与が大きいとされる。ただし営業利益は4億3,100万ドルにとどまる。大きいのは減価償却費の24億7,300万ドルと、Cursor買収に伴う株式報酬の12億1,700万ドルという、現金支出を伴わない費用である。純利益44億400万ドルには評価益などの一時的な項目が含まれるため、本業の状況は営業利益で見る必要がある。一方、Starlinkは法人・政府向け売上が91%増となり、航空機向けの設置数も3,800機を超えた。Starshipは次世代衛星V3を26機投入し、月面への荷物輸送や微小重力研究向けのミッションも受注した。1〜9月の設備投資は480億6,900万ドルに達し、営業キャッシュフローの130億9,700万ドルを大きく上回るため、その差をIPOによる調達資金などで埋めている。
この決算が宇宙産業のサプライチェーンに持つ意味は、計算基盤への投資が宇宙関連の需要を地上側へ広げつつある点にある。SpaceXによれば、AIの拡大を制約するのは半導体よりも電力・冷却・電気設備であり、同社はロケットエンジン向けに培った鋳造技術を発電用タービンの動翼・静翼へ応用し始めた。ロケットの製造技術が地上のインフラに転用される例であり、宇宙と地上の製造業の境界が薄くなる可能性を示している。宇宙産業の製造業にとっては、自社の技術が宇宙向けにとどまらず、データセンターや発電など別の市場でも使える可能性があるという見方につながる。一方で注意も必要だ。Q3の全社売上の34.5%はSIの顧客1社によるもので、クラウド契約は双方が90日前の通知で解約できる条件のため、受注残629億5,900万ドルがそのまま確実な売上になるとは限らない。投資を1年未満で回収できるという同社の説明も、現在の価格水準を前提にしたものである。
日本の製造業・部品サプライヤーの視点では、関わりうる領域が複数考えられる。第一に、データセンター向けの電力・冷却・電気設備の需要が増える可能性があり、受変電機器や冷却装置、大型の鋳造・精密加工品を手がける企業には関連が生じうる。第二に、Starlinkの航空機向け端末は生産ペースを年初から4倍に引き上げ、年末までにさらに倍増させる計画で、通信機器の筐体や電子部品、アンテナ関連の量産需要が広がる余地がある。第三に、Starship関連の外部ミッションが増えれば、宇宙向けの部品や試験設備にも需要が続く可能性がある。ただし、SpaceXがどの部材をどこから調達するかは記事では示されておらず、鋳造などを自社で内製化する方針を取っている点は、外部サプライヤーの参入機会を限定する可能性がある。取引を検討する際は、認証、数量、納期の条件を具体的に確認することが現実的だと考えられる。
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出典:宙畑



