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エンケラドゥスの内部海を模した強アルカリ性の実験環境で地球の微生物の一種が増殖

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土星の衛星エンケラドゥスの内部海を模した強アルカリ環境で、地球の微生物が通常の生存限界を超えて増殖することが確認された。ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの研究チームが報告したこの成果は、太陽系内での生命の可能性を検証する新たな知見をもたらすものである。

エンケラドゥスは土星の衛星の中で注目度が高い天体だ。南極付近からプルーム(水蒸気や氷粒の噴出)が観測されており、厚い氷殻の下に液体の水の海が存在すると考えられている。NASA と ESA の探査機カッシーニの観測では、このプルームから水素やメタンが検出され、生命が存在する可能性を示唆する証拠として議論されてきた。しかし生命が存在するためには、微生物が増殖できる化学環境が必要である。ここに大きな課題があった。エンケラドゥスの内部海は炭酸塩を多く含むアルカリ性であり、pH は 8~11.6 と推定されている。一方、地球の微生物のうちメタンを生成する者たちは、一般に中性からやや酸性の環境に適応している。なぜなら、水に溶けた炭素が二酸化炭素(CO2)の形で存在しやすいのは pH が低いときだからだ。pH が 9 を超えると炭素の大部分は炭酸水素イオンや炭酸イオンの形になり、利用可能な CO2 は極めて乏しくなる。こうした極限環境で微生物が本当に増殖できるのか、それは長年わかっていなかった。

研究チームは沖縄トラフの深海熱水噴出孔で採取されたアーキア(古細菌)の一種「メタノサーモコッカス・オキナワエンシス」を用いて実験に臨んだ。この微生物は水素と CO2 からメタンを作ってエネルギーを得るもので、通常は pH 8.5 を上限に増殖するとされていた。実験では、エンケラドゥスの岩石コアを模した粉末に、炭素を豊富に含むアルカリ性の水と塩化鉄(Ⅱ)を加え、酸素のない環境に置いた。すると鉄と水の反応によって水素が発生し、この微生物は pH 11 という常識を超える強アルカリ環境でも増殖し、メタンを生み出した。分析によれば、微生物は還元的アセチルCoA 経路という CO2 取り込みの遺伝子を活発にさせることで、わずかな CO2 を効率よく集めていたと考えられる。模擬環境の水に溶けた炭素は通常の培養液と比べて 10 倍に上ったという。

この発見がもつ意味は重要である。それはエンケラドゥスという極限環境が、地球の最も古い代謝形式の一つを支え得ることを示したのだ。論文の共著者は「私たちの研究はエンケラドゥスに生命が存在することを証明するものではない」と慎重に述べながらも、「衛星の海に由来するプルームから試料を採取する将来のミッションの科学的根拠を強める」と指摘している。現に ESA ではエンケラドゥスに周回機と着陸機を送り込む探査ミッションの検討が進められており、この研究はそうした計画の意義をさらに高める材料となり得るのだ。

日本の製造業にとって、この動きは衛星探査機器の需要につながる可能性を持つ。エンケラドゥス探査が実現すれば、耐酸化性・耐熱性に優れた素材や、高精度のセンサー・計測機器、通信機器の部品など、多くの最先端技術が要求されることになる。基礎科学の進展が、やがて産業の成長へと結びつく—その過程で日本の部品・装置メーカーが果たす役割は小さくない。

※ 内容の紹介はここまでです。続きは元記事をご覧ください。

出典:sorae

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