中国民間企業の再利用型ロケット「パラス1」、初号機打ち上げに成功
中国の民間企業ギャラクティック・エナジーが開発したパラス1ロケットが8月末に初飛行に成功した。同社はセレス1という小型衛星ロケットで既に23回の飛行実績を持つが、パラス1は「大規模衛星コンステレーション時代の中核機体」として位置づけられており、この成功は中国での再利用可能ロケット開発が新たな段階に進んだことを示している。
パラス1は高さ52メートル、地球低軌道への搭載量が約7000キログラムの2段式ロケットで、8月31日に新疆の酒泉衛星発射センターから打ち上げられた。このロケットの最大の特徴は、スペースXのファルコン9と同様に再利用可能な1段目を備えており、ギャラクティック・エナジーはこれを25回の飛行に耐えうるように設計したと発表している。ロケット本体をグリッドフィンと展開式の脚で減速・誘導しながら地球に帰還させるという着陸メカニズムもスペースXと同じ方式を採用している。初飛行では着陸は試みず、実際の着陸試験は2027年後半の実施を目指しているという。
中国ではここ数ヶ月の間に複数のロケットが再利用可能技術の実現に成功している。国営企業の中国航天科技集団が開発した長征10Bは7月に1段目の海上回収に成功し、民間企業のランドスペースが開発したザックエ3は8月に着陸脚を使った軟着陸を実現している。パラス1の初飛行は、こうした先行事例に続く民間企業による大型ロケットの挑戦であり、市場ニーズの高さを示している。またキャススペース、ディープブルーエアロスペース、アイスペース、オーリエンスペース、スペースパイオニアなど複数の民間企業が同様の再利用ロケット開発を並行して進めているとされており、競争環境が急速に激化している。
こうした動きが示唆するのは、衛星コンステレーション展開に代表される大規模打ち上げ需要に応えるため、再利用可能なロケットへの転換が産業標準へと急速に移行しようとしていることである。かつてロケットは使い捨てが当たり前だったが、技術的に再利用が実現可能になれば、1回あたりの打ち上げコストが大幅に低下する可能性が高い。それは打ち上げ市場全体の拡大と新規顧客層の創出につながると考えられ、宇宙産業全体の構造が大きく変わっていく可能性がある。また再利用化により打ち上げ頻度の向上も期待でき、衛星事業者にとっての投資効率も改善されると考えられる。
日本の部品・装置・素材メーカーにとって、こうした再利用ロケット市場の急成長は複数の含意を持つ。ロケットエンジン再利用に伴う高温耐性要件の厳格化、グリッドフィンや着陸脚などの新部品に対する素材・加工技術の需要増加、そして着陸・回収プロセスの実現に向けた各種装置開発などが、新たなサプライチェーン機会となる可能性がある。同時に中国民間企業の急速な技術進化は、既存の宇宙部品サプライヤーの競争環境を大きく変え、新たな技術開発や提携機会が生まれる可能性もあると考えられる。
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