ポッドキャスト『This Week In Space』第232回「ルナー・ダンプ」
NASAはアルテミス2のミッションで得た月のデータを、800GBを超える規模でオンライン公開した。公開されたのは月の科学データや画像などで、番組では宇宙飛行士が添えた注記が観測結果の価値を高める要素として取り上げられている。特に月の裏側で観測された衝突閃光を乗組員が目撃したと報じられており、機器の記録だけでは得にくい現場の所見が含まれている点が、今回の公開の特徴といえる。
アルテミス2は有人で月を周回し、記録的な周回飛行を達成したと報じられている。次の段階であるアルテミス3については、ミッションの構成と、SpaceXやブルーオリジンにとっての成否の重みが番組で話題にされた。NASAも計画の加速や今後の月ミッションの状況について説明の場を設ける予定とされており、月計画の全体像は今まさに動いている段階にある。計画の進め方が変わるたびに関連するサプライチェーンの発注の時期や規模も影響を受けるため、この動きは製造業にとっても無関係ではない。
公開データの中身は今後の分析で具体化していくとみられるが、実測データが蓄積されることで、月面で使う機器の設計条件や試験条件が見直される可能性がある。これまで地上の試験や推定に頼っていた前提を、実際の月の環境に照らして確かめられるようになるからだ。設計の前提が推定から実測へと移っていけば、材料や部品に求められる仕様の精度も上がっていくと考えられる。宇宙産業全体にとっては、データの公開がその流れを加速させる材料になりうるという点に意味がある。
日本の製造業にとっては、月面活動に関わる部品や素材の需要がどの領域で生じるかが関心の対象になる。元記事が紹介しているPradaとAxiomによる冷却服は、宇宙服の下に着る冷却服であることから、月面での体温の上昇を抑える目的で用いられると見られる。冷却配管やポンプ、温度制御の部品、軽量で柔軟な素材などが関わる領域となり、精密な熱管理部品や耐熱・耐放射線性を持つ素材を手がける企業には関与の余地があると考えられる。ただし、どの領域で発注が出るかは各社の判断に依存するため、現時点で見通しを断定することはできない。
一方で、アルテミス3や民間企業の打ち上げ計画は発表段階のものも含まれており、実際の進捗は今後の公式発表で確認する必要がある。打ち上げ頻度や着陸の時期が具体化すれば、民間企業の調達需要の時期と規模も変わってくる。製造業としては、月データの動向とスペースXやブルーオリジンの開発の進み方を同時に追うことが、受注準備の判断材料になるだろう。
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