大胆な人工衛星救出ミッションはこうして記録的短時間で実現した
米航空宇宙局(NASA)は、大気圏への再突入が迫る天文観測衛星「スウィフト」を救うため、スタートアップのKatalyst Space Technologiesに3,000万ドルの契約を発注した。同社はサービス宇宙機「LINK」を1年足らずで組み上げ、打ち上げ準備を整えた。通常は数年かかる宇宙機の開発を、どのように短期間で実現したのかが今回の要点である。
スウィフトは2004年に打ち上げられたガンマ線バースト観測衛星で、現在も多波長の観測機器が宇宙物理学の研究に欠かせない。しかし軌道を維持するスラスターを備えておらず、大気の抵抗によって高度が少しずつ下がってきた。打ち上げ当時の約585kmから、2026年6月には約363kmまで低下している。太陽活動の活発化で大気が膨らみ、抵抗が増したことも低下を早めた要因と見られる。NASAは同年秋ごろには約300kmまで下がり、救出機が安全に接近できなくなると予測した。Katalystに与えられた期間は1年未満で、6月末までの打ち上げが求められた。
NASAは通常の公募による提案募集を省き、すでに技術開発の契約を結んでいた企業に検討を依頼した。Katalystは民間向けに進めていた開発をNASA向けに切り替え、納期に間に合わないサプライヤーの部品は自社で製造するなど、リスクを受け入れて工程を圧縮した。打ち上げには空中発射型ロケット「ペガサスXL」が選ばれた。スウィフトは南北20度の範囲を通過する特異な軌道を回るため、ケープカナベラルからの打ち上げでは接近が難しく、運用の自由度が高い方式が必要だったからだ。
この事例が示すのは、既存の手順を見直せば開発期間を大きく縮められる可能性があるということだ。ただし、LINKはKatalystにとって開発した宇宙ミッションとして2件目にすぎず、準備を急いだ分の不確実性は残っていた。元記事の編集注によれば、打ち上げ後に姿勢制御の問題が生じて救出は実現せず、ミッションは実証へと変更されたという。短期間で宇宙機を立ち上げる手法は示されたが、成功が保証されるものではなかったと読むのが妥当だろう。記事では、政府機関の依頼に民間企業が商用サービスとして応えた点も強調されている。
製造業の視点で見ると、今回の要点は部品の納期と生産体制の柔軟性である。燃料タンク、太陽電池、スラスター、ロボットアームといった部品は、いずれも金属加工や電子部品、素材を手がける企業が関わりうる領域だ。急な設計変更や短納期の要求に小ロットでも即応できるサプライヤーほど、こうした新興の宇宙事業との取引機会を得やすくなる可能性がある。宇宙の商業化が進むなかで、従来の大量生産型とは異なる受注の形が増えるかもしれない。
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出典:WIRED.jp

