Tiny salt crevices could act as miniature 'Greenhouses' for Martian microbes
火星の表面にある塩の微細な割れ目が、火星微生物の生存に必要な液体の水と適切な温度の両方を同時に提供し得るという研究が発表された。火星の極端な気温変動を利用して、塩の結晶が日々収縮・膨張し、割れ目に水を一時的に閉じ込める可能性が示されたのである。
火星で生命を探す際の根本的な問題は、生命に必要な液体の水と適切な温度が火星上ではほぼ同時に存在しないという矛盾にある。火星の夜間は気温が−80℃まで低下し、相対湿度は高まるものの、生命が代謝活動を行うには余りに寒い。一方、昼間は気温が0℃以上に上昇し、生命が活動できる温度範囲に入るが、太陽の熱で大気中の水分は完全に蒸発してしまう。ただし、火星の気温は1日で150℃もの変動幅を記録し、この温度差がもたらす膨張・収縮のメカニズムが問題を解く鍵になると考えられる。
塩化ナトリウム(塩)の結晶は極低温から常温への温度変化により最大1.6%収縮・膨張する。この過程で岩盤に微細な割れ目が形成され、夜間に塩結晶は大気中の水蒸気を吸収する性質(吸湿性)を持つため、割れ目内に液体の塩水(ブライン)が形成される。翌朝、太陽が塩結晶を温めると膨張して割れ目を再び塞ぐため、内部の水は外界に逃げられず、暖かく液体のまま閉じ込められるのである。結果として、火星の夏期の限られた時間だが、割れ目内には生命が活動できる温度と液体の水が共存する。さらに割れ目を塞ぐ数ミリメートルの岩盤は、火星表面を致命的にするUV放射から微生物を保護し、同時に可視光線は透過させるため、理論上、その環境下の微生物は光合成によるエネルギー獲得も可能になる。
地球上にもこれと似た生存戦略を取る微生物が存在する。チリのアタカマ砂漠という地球上で最も乾燥した地域では、シアノバクテリアが土壌を離れ、塩の岩石の孔隙に移住して、塩が大気から吸収する水に依存して生存している。こうした例は、火星の塩の割れ目という環境でも、少なくとも理論的には地球由来の生命が存在し得る可能性を示唆している。ただし、課題も残されている。割れ目が毎日完全に塞がるという保証はなく、昼間に水が漏出する可能性がある。また、塩自体が地球上の大多数の生命にとって毒性を持つパークロレートに汚染されている可能性も否定できない。さらに、割れ目内の微生物がUV放射から保護されたとしても、より高いエネルギーの宇宙線に対しては数ミリメートルの岩盤では防ぎようがない。微生物がこのような環境で実際に生存している可能性は低いと考えられるが、生命は予期しない方法で適応してきた。
火星の地質環境に関する理解が深まることは、宇宙探査機や採掘機器など火星表面で動作する装置の設計にも影響を与える可能性がある。特に、火星の塩構造がもたらす機械的ストレスや微細化学環境への耐性が必要になると考えられ、日本の素材メーカーやシーリング・防水技術を持つ部品サプライヤーにとって、火星環境への適応性が将来的な事業化の可能性につながる可能性がある。また、微生物が存在する可能性のある環境の検出・採取・分析を行う機器の開発も、精密加工技術や計測装置を保有する企業にとって関心の高い領域になることが見込まれる。
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Source:Phys.org
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