Racing to build a radio telescope on the moon
月の裏側への電波望遠鏡設置が急速に進められている。地球周辺の電波ノイズが急速に増加し、さらに2030年までに月周辺の衛星・着陸機も増加するため、月の裏側という最後の「静かな」観測地点が限定的な時間しか利用できなくなるからである。
地球から発生する電波干渉は衛星やレーダー、通信技術から絶え間なく増加している。1977年に検出された謎の高エネルギー電波信号「Wow!シグナル」は、当時の地球が電波帯域において比較的「静かだった」からこそ発見できた。同じシグナルが現在受信されても、人間が発する電波ノイズの背景に埋もれて気付かない可能性が高い。さらに電離層が低周波信号をブロックするため、地上からの検出はますます困難になっている。こうした背景から、科学者とエンジニアは月の裏側に電波望遠鏡を配置する計画を長年温めてきた。月の裏側は地球の電波ノイズから遮断された太陽系内で最後の安全な観測地点と言える。オックスフォード大学のデイビッド・デブオアら研究チームによる新しい論文は、「月遠側トランジェント及び技術望遠鏡(LFT3)」ミッションの詳細な実装計画を提案している。このミッションは2030年までに月の裏側に高度な電波アンテナを展開し、予算はNASAの商用月ペイロード輸送プログラムを活用することで1.5億ドルに抑える計画である。
LFT3ミッションはHF、VHF、UHFの周波数帯域で約20週間にわたり深宇宙を観測する。月の極端な環境は大きな課題である。昼間は120℃、夜間は-130℃に達する温度変動に耐える必要があり、こうした条件下での設計・製造は現在の技術で対応可能と考えられる。しかしデータ通信はより深刻な課題である。月の裏側は地球と直接通信ができないため周回衛星を経由してデータを中継する必要があるが、現在の月インフラは月間約100ギガバイトの転送容量に限定されており、高分解能なデータ送信には不十分である。そのため望遠鏡自体で大規模な前処理とフィルタリングを行い、厳密なチェックに合格したデータのみを地球に送信する計画だが、これには放射線耐性を持つ計算機器が必要不可欠である。科学的には三つの目標がある。第一は「Wow!シグナル」のようなテクノシグナチャー(宇宙人の技術の痕跡)の検出であり、ブレークスルー・リッスン・イニシアティブによって支援されている。第二は系外惑星周辺のオーロラ観測であり、これが発する電波信号は惑星の居住可能性を示唆する可能性がある。第三は高速電波バースト(FRB)と長周期トランジェントの観測であり、電波が静かな環境だからこそ高い精度で検出できる。
現在、このミッションはまだ資金提供を受けていないが、1.5億ドルの予算規模は相対的に魅力的である。月の今後の拡張計画によってこのミッションの有効期限に時間的な制限が加わっている現状を考えると、実現の可能性は高まると考えられる。実現すれば、電波天文学と宇宙への理解が大きく進むことは確実である。日本の部品・素材メーカーにとって、このミッションは複数の着眼点を提供する。月の極端な温度環境に耐える機器・素材の需要、放射線耐性を持つ計算機器・電子部品の設計・製造に関わる機会、そしてデータ処理を現場で行うための小型化・軽量化された宇宙用部品の需要である。こうした分野は宇宙産業における成長領域であり、月ミッションの実現は日本の宇宙サプライチェーンにおける重要な案件となる可能性が高い。
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Source:Phys.org
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