Space station experiment to probe plant disease risks for future moon and Mars missions
フロリダ大学(UF)の研究チームが、国際宇宙ステーション(ISS)で植物の病気への反応を調べる実験「MVP-Plant-02」を10月13日に打ち上げた。月や火星での長期滞在に備え、宇宙環境が植物の病害への防御を弱めたり、感染を重くしたりするかどうかを確かめるのが狙いである。
背景には、NASAなどが人類の地球外での滞在期間を延ばそうとしている事情がある。滞在が長くなるほど、地球からの補給だけで食料をまかなうのは難しくなる。そこで注目されているのが、植物などの生物的なプロセスで食料や酸素、水を再生する「生物再生型生命維持システム」である。元記事によれば、このシステムを安定して運用するには、植物が長期間にわたって健康に育ち続けることが欠かせない。今回の実験では、シロイヌナズナにうどんこ病の原因となる真菌を感染させ、微小重力下で病気がより激しく進むのか、遺伝子の働きがどう変わるのかを調べる。比較対象として、ISS内の地球に近い重力条件で育てた植物と、ケネディ宇宙センターの地上対照区も用意されている。
特徴的なのは、植物を種子の段階から宇宙で育て、宇宙に上がった後に胞子を散布する点である。従来の宇宙実験では打ち上げ前に病原体を植え付けていたため、植物の防御機能が微小重力の影響を受ける前に感染が始まっていた。今回の方法では、植物がまず宇宙環境を経験してから感染が始まるため、宇宙環境そのものが病気の進み方に与える影響を切り分けて評価しやすくなる。その胞子散布のために、レッドワイヤーと共同で「Conidia Application Device」という装置を開発し、閉じた系の中で無菌的に胞子を散布できるようにした。この手法は、宇宙での植物病理学の進め方を変えうる一歩であると考えられる。
この結果は、地上の農業で使われている病害管理の方法を宇宙でもそのまま使えるのか、それとも作り替えが必要なのかを判断する材料になる。病気が微小重力で激しくなると分かれば、月や火星の居住施設に向けた予防策を設計する際の手がかりとなる。また、ISSで植物と病原体の複雑な実験ができることが示されれば、地球外で食料を作るための研究の選択肢も広がる。
日本の製造業にとって、この分野は部品や装置の需要に結びつく可能性がある。植物を育てる照明や環境制御機器、胞子の散布や試料の取り扱いに使う精密機器、密閉系の部材などは、宇宙での植物栽培が進むほど求められると考えられる。また、今回のように宇宙で使う実験装置を設計・製作する取り組みでは、耐環境性や無菌性を確保する加工・素材技術が問われるだろう。国内の部品メーカーが、こうした小規模だが要求水準の高い装置の一部に関わる余地は十分にあると考えられる。
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Source:Phys.org
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