New krypton-88 data narrow a key gap in stellar strontium models
国際研究チームが、恒星内でストロンチウムがどのように生成されるかを解明する上で重要な核物理反応について、初めての実験的調査を報告した。クリプトン-88が中性子を吸収する際の反応率を従来の8倍の精度で測定し、その値が理論予測より一貫して低いことを明らかにした研究成果である。
この発見は、古い星の元素組成を理解する上で大きな転機となる。宇宙には「s-プロセス」「r-プロセス」「p-プロセス」という三つの元素生成メカニズムが知られており、1950年代からはほぼすべての重い元素がこれらのプロセスで生まれると考えられていた。しかし1990年代、観測された古い星のストロンチウムの量がどの理論でも説明できないという矛盾が浮上した。この謎を解くため、科学者たちは「i-プロセス」という新たなメカニズムを提案した。これはs-プロセスとr-プロセスの中間的な条件で進行し、原子核が分単位のタイムスケールで中性子を吸収して重い元素を作る過程である。i-プロセスのモデルはほぼすべての元素の生成量を再現しながらも、ストロンチウムだけは観測より少なすぎるという困難を抱えていた。その理由がクリプトン-88の中性子捕獲率という「欠けたピース」であると予測されていたのである。
研究チームは、恒星の極限環境を地上で直接再現することが困難なため、間接的な測定手法を採用した。クリプトン-88に中性子一つを加えたクリプトン-89を生成し、その崩壊時に放出されるガンマ線を検出することで、元の反応経路を逆算する方法である。高エネルギー加速器施設の先端的な計測器と高純度ビームの組み合わせにより、クリプトン-88の中性子吸収率の不確実性を従来の8倍から3倍に縮小することに成功した。測定値は理論予測より低かったが、この新しい値をi-プロセスモデルに組み込むと、ストロンチウムの生成量が増加し、天文観測との食い違いが大幅に改善された。
この研究成果は、単なる基礎物理の知見にとどまらない意味を持つ。恒星の化学進化を正確に理解することは、宇宙の初期段階での元素合成を復元する天体物理学にとって重要であり、宇宙探査ミッションの信頼性向上へ向けた基礎知識の充実に寄与する。日本の製造業、特に精密分析機器や計測センサーを扱う企業にとって、このような高精度の核物理データは今後の産業応用の可能性を広げるものと考えられる。基礎研究が産業応用に結実するまでには時間を要することが多いが、こうした測定精度の向上の積み重ねが、やがて素材開発や装置改善の課題解決へと波及していく可能性がある。
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Source:Phys.org
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