Peptides can form well-defined structures in harsh, Venus-like conditions
金星のような過酷な酸性環境(98%硫酸)でペプチドが安定して存在し、特定の三次元構造を形成できることがMITの研究で明らかになった。従来、このような極端に酸性の環境では複雑な生物分子は生存できないと考えられていたが、この発見がその仮説を揺さぶっている。
金星の表面は高温で生命に不適だが、地表から48〜64キロメートル上空の雲層は生命存在に適した温度を持つ。ただし、その雲は硫酸の液滴で構成されており、地球上のほとんどの生物分子を破壊する環境だ。隕石がアミノ酸やペプチドの構成要素を金星の大気に運ぶ可能性があり、もしペプチドがこの腐食性環境で生き残れば、単純な生命形態の構成要素になり得る。こうした問題意識のもと、2020年からシーガー研究室は様々な生物分子がこのような酸性条件で持続できるか調べ始めた。MITの化学計器施設でNMR分光法を用いた分析の結果、核酸、脂質、アミノ酸は酸性条件でも完全に保たれることがわかった。次は、ペプチドが持続し、さらに生物学的機能を持つ可能性のある形状に折りたたまれるかどうかを調べることだった。
研究チームは予想外の結果を得た。研究対象のペプチドは濃硫酸中で数週間にわたって安定していたのだ。理由は、98%硫酸では水分子がほぼ存在しないため、ペプチド結合を切る加水分解反応が起こらないからと考えられる。水中では平坦なベータシートを形成するはずのペプチド分子が、濃硫酸中ではギリシャ文字のオメガのような形のループ構造を形成することが発見された。硫酸分子がこのループの中心に位置して足場となり、その形状を保つ役割を果たしていると推測されている。タンパク質が機能するためには特定の三次元構造が必要であり、このオメガループ構造が酸性環境で形成されたことは、ペプチドがそのような環境での生物学的機能を実行する可能性があることを示唆している。
この発見の意義は、生命探索の範囲を根本的に拡張することにある。従来、科学者は地球と似た液体表面を持つ惑星を中心に生命を探してきた。しかし、ペプチドが金星のような環境でも機能的な構造を形成できることが示されたことで、生命が存在する可能性のある惑星のタイプは従来の想定をはるかに超える可能性があると考えられる。これは太陽系内の他の天体、さらには系外惑星の調査における探索対象を根本的に変える可能性を持つ。そうした新しい探索領域の開拓は、宇宙探査機器に対する新たな技術的要求をもたらす可能性がある。
この研究が日本の部品・装置メーカーに関係する分野として、宇宙探査機器の耐環境性設計が考えられる。金星や他の過酷環境での生命探索に向けた探査機器の開発が本格化すれば、極限環境での安定性が求められる素材や計測機器への需要が増える可能性がある。特にNMR分光法などの分析装置や、極限環境での動作を保証する部品・素材に対する国際的な需要が高まる可能性がある。
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Source:Phys.org
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