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A trip to Mars could come at a heartbreaking cost

米ウィスコンシン医科大学の研究チームが、火星などの深宇宙へ向かう宇宙飛行士が受けうる健康影響をラットで検証し、結果を学術誌PLOS ONEに発表した。深宇宙では地球の大気と磁場に守られていない放射線と無重力という二つの要因にさらされるが、その影響がどこまで長く続くのかは分かっていなかった。今回の研究は、その問いに望ましくない答えを示した。

人間を対象にした長期の被ばく実験は現実的でも倫理的でもないため、研究チームはNASAが開発した後肢懸垂(ハインドリム・アンローディング)で無重力を再現し、ブルックヘブン国立研究所のNASA宇宙放射線研究施設で宇宙線環境を模した照射を行った。主要な知見の一つは心臓である。1.5グレイの線量では、冠動脈を取り巻く瘢痕組織(血管周囲線維化)が照射から270日後には倍に拡大し、血管を圧迫して心筋梗塞の可能性を高めた。この変化は無重力では見られず、放射線が原因と考えられている。火星ミッションの3年間に相当する低線量でも、照射から1年後には83%のラットに同様の瘢痕が現れた。影響が表に出るまでに、人間の寿命の数十年を要する可能性がある。

免疫面では、照射から数カ月が過ぎても脾臓のナチュラルキラー(NK)細胞が本来の3分の2を欠いたままだった。無重力だけの場合は通常の水準に戻っていたことから、放射線が骨髄のストレス応答を鈍らせたと見られる。さらに照射から235日後に白血球のゲノムを調べると、加齢に伴って現れるクローン性造血(CHIP)に関連する遺伝子変異が永続的に確認された。通常は長い年月をかけて進む変化が放射線によって早められたように見えるため、白血病や心血管系のリスクが高まることが懸念される。

ただし研究には限界がある。線量は長期間にわたる被ばくではなく一度に照射されており、細胞の修復機構が実際の長期被ばくにどこまで対抗できるかは不明だ。雄のラットのみを対象とした点も、宇宙飛行士全体の反応を映すとは限らない。動物実験の結果をそのまま人に当てはめることはできず、長期的な影響が修復の努力に関係なく蓄積するのかも確認されていない。

宇宙産業にとっての意味は、放射線対策を打ち上げ時の安全だけでなく、帰還後の健康管理まで含む長期課題として捉え直す必要が示された点にある。今後は遮蔽設計や滞在期間、医療モニタリングのあり方が議論の焦点になると考えられる。日本の製造業にとっては、船体の放射線遮蔽に使う材料、放射線環境で性能を保つ電子部品、船内の被ばく線量を測る計測機器などが関わりうる分野である。今回の研究が設計要件を直接定めるわけではないため、求められる仕様は今後の議論次第だが、放射線環境での長期信頼性を検証できる部品や素材を持つ企業は、早い段階から仕様づくりに関われる可能性がある。

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Source:Phys.org

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