Neutrons, rotating black holes, and a galactic PeVatron at the center of the Milky Way
銀河系中心のブラックホールから直接エネルギーを抽出するメカニズム「ペンローズプロセス」が、現実に観測できる痕跡を残す可能性が新しい研究で示された。50年以上前に提唱された理論が、超高エネルギー粒子の観測を通じて検証される道が開けようとしている。
ペンローズプロセスは1969年に提案された概念である。ブラックホールが周辺の物質を吸い込むことでエネルギーを放出する仕組みはよく知られているが、このプロセスはそれと異なり、回転するブラックホール自体から直接エネルギーを取り出すメカニズムを説く。鍵となるのが「エルゴスフィア」と呼ばれるブラックホール周辺の特殊な領域である。ブラックホールが回転すると、その周囲の時空そのものが巻き込まれる。この「フレームドラッギング」効果が非常に強い領域がエルゴスフィアであり、光速に近い速度で移動する物体ですら逆らうことができない。一度この領域に入ると、どんな宇宙船もブラックホールの周りを回転させられてしまう。この領域に物質が落ち込む際、適切な条件下では、落ち込む物質が失ったエネルギーが外へ放出される。理論上、ブラックホールから質量を奪いながら大量のエネルギーを得られるのだ。
今回の研究は、銀河系中心のブラックホール「Sgr A*」のエルゴスフィアで起こる「磁気ペンローズプロセス」に着目した。研究チームは、この領域に侵入した中性子が電子を放出して陽子に変わる際、強い磁場と相互作用することで、ペタ電子ボルト(PeV)というきわめて高いエネルギーの陽子が生成される可能性を計算した。この値は大型ハドロン衝突型加速器で生成される最高エネルギー陽子の千倍以上である。こうした陽子はブラックホール周辺を取り巻くガス分子と衝突し、特有の分光特性を持つ高エネルギーガンマ線を放出する。同時に中性子の崩壊過程で高エネルギーニュートリノも生成されるため、光とニュートリノの両方が観測できる「マルチメッセンジャー信号」として検出される可能性がある。
現在の観測技術ではこれらの信号は極めて微弱だが、高高度水チェレンコフ観測所(HAWC)とアイスキューブニュートリノ観測所の改良版であれば近い将来に検出可能と考えられる。実現すれば、50年以上前の理論が実験的に初めて確認される。同時にそれは、ブラックホールが周辺環境とのエネルギー交換を通じて質量を失う可能性のある天体であることを証明する。ブラックホールは一方的に物質を吸収するだけでなく、特定の条件下では逆にエネルギーを失うという二面性を持つことが示されるのだ。
こうした超高エネルギー粒子の検出には、きわめて精密な観測機器の開発が不可欠である。HAWC観測所やアイスキューブのような最先端施設には、高感度の光検出器、信号処理電子機器、精密なキャリブレーション機構、耐久性のある構造部材など、多くの高度な部品・素材が必要とされる。日本の製造業がこうした最先端観測施設の部品・素材供給を通じて宇宙科学の進展に貢献する機会は、今後も増えていくと考えられる。
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Source:Phys.org
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