The far side of the moon provides clues to a past magnetic field
月の裏側で発見された42億年前の火山複合体から、かつての月が予想以上に強い磁場を持っていたことが明らかになった。スイスの研究機関による新しい解析手法が、月の初期段階の内部構造と磁場発生メカニズムの謎に大きな光を当てている。
これまで月の磁場については、アポロ宇宙飛行士が持ち帰った岩石サンプルの分析結果が相反していた。地球の外核における液体鉄の流動が作る磁場(ダイナモ)と同様の仕組みが月にもかつて存在したかどうかが議論の中心だったが、サンプルの解析では磁場が存在したという説と存在しなかったという説が対立していた。
ETH Zurichと独DLR、ベルリン工科大学の研究チームは、従来のサンプル分析ではなく、衛星軌道からの観測データに着目した。NASAの重力計測衛星GRAILと、月探査機ルナープロスペクターおよび月周回衛星かぐやが取得した磁場データを組み合わせることで、月の表側(地球からは見えない)にあるDewar領域で、磁場異常と重力異常が正確に重なり合う場所を特定した。この領域には、深さ約9キロ、幅約60キロの火山性の貫入岩体が存在し、周囲より密度が高く強く磁化されていることが判明した。この構造が形成された年代は、月面への隕石衝突跡から42億年前と推定される。
この発見の重要性は、月の初期磁場の強さを推定できたことにある。研究チームは、そのような岩体に含まれる鉄の量から、マグマが冷却する際に必要だった磁場強度を逆算し、月の磁場は少なくとも10マイクロテスラ以上あったと結論づけた。これは現在の地球の磁場強度(約50マイクロテスラ)と比較しても無視できない規模である。さらに、巨大な隕石衝撃によって磁化が生じる可能性は地理的に排除でき、月の内核が長期間ダイナモを発生させていたことがほぼ確実と言えるようになった。ただし、月ほど小さな天体の内核がなぜそれほど強い磁場を生み出せたのかは、なお未解明である。
この研究手法は、月の謎の現象である「月面スワール」(月表面に見られる明るい筋状の模様)の説明にもつながる可能性を示唆している。磁場異常が存在する場所にはスワールが観察される傾向があり、水平方向の磁場が太陽風を偏向させ、月面の風化を抑制することでスワールが形成される可能性が考えられるという。今後の月面ミッションにおいて、この知見は着陸地点の選定や資料採集の優先順位の決定に活用されると予想される。一方、こうした新しい解析手法は月に限らず、他の天体の内部構造と磁場進化の歴史を調べるのにも応用できると考えられ、惑星科学全体への波及効果が期待される。
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Source:Phys.org
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