ESA opens call to repurpose Gateway communications module
NASA の月面基地「ゲートウェイ」計画が一時停止されたなか、欧州宇宙機関(ESA)は当初その基地用に開発された通信システムを独立した月軌道衛星として再利用する可能性の調査に乗り出した。ESA が 7 月末に発表した入札招請により、複数の企業による並行した設計調査が始まり、2029 年第 4 四半期への打ち上げを目指すプロジェクトが本格的に動き始める。この転換は、不確実性の増した宇宙開発環境の中で既存リソースを活かす戦略として、業界に示唆を与えるものとなる。
元々、この通信システム「Lunar Link」はフランスの大手宇宙企業タレス・アレニア・スペース・フランスが開発を進めていたもので、NASA のゲートウェイ向けの通信および給油施設として設計されていた。2021 年には ESA がその企業に 2.96 億ユーロの大型契約を発注し、Lunar Link と給油システム「Lunar View」をセットで開発させていた。ところが今年 3 月、NASA がゲートウェイの当面の配備を先延ばしする決定を下したことで、当初の用途が不確実になったのである。この状況を受けて ESA は、既に開発投資が進んだシステムの価値を維持する方策として、6 月のカウンシル会議で新しい活用法の検討を決議し、7 月末の入札招請へと進んだ。
計画では、最大 300 万ユーロの契約を最大 2 本、並行して発注することになっており、合計で相応の規模の開発投資が行われることになる。調査は最長 12 ヶ月間の短期設計フェーズ(Phase A/B1)と位置づけられ、既に開発が大きく進んだ Lunar Link ペイロードを既存の衛星プラットフォームに搭載する技術的可行性を検討することが中心となる。注目すべきは、開発企業であるタレス・アレニア・スペース・フランスが飛行ハードウェアを既に高度な開発段階まで進めており、試作品が機能試験および環境試験を完了しており、アンテナ展開試験を残すのみという状態にあることだ。同社は年内の認定取得を目指しており、第 3 四半期から認定・受け入れレビューを開始する予定とされている。
この Lunar Link 再利用計画は、ESA の月面通信・測位システム「Moonlight」構想の先駆けおよび補完となると位置づけられている。既に開発が進んだシステムを新たな用途に活用する戦略は、宇宙開発における資源効率と実現可能性のバランスを示すものである。一方、ESA の他のゲートウェイ関連要素の行く末は不透明で、居住モジュール「Lunar I-Hab」は重要設計レビュー段階までは開発継続が決定されているものの、その後の方向性はまだ検討段階にあるとのこと。給油システム「Lunar View」についても、開発ペースを落としながら深宇宙探査に必要な要素技術は保持する方針が取られている。
日本の部品・装置・素材メーカーにとって、月面通信インフラの構築に向かう動きは複数の形で関わりうる。Lunar Link の実運用化に至る過程で、中継機器や受信装置などの周辺機器・部品、あるいは搭載基盤となる衛星プラットフォーム用の機器の供給機会が拡大する可能性がある。また 2029 年第 4 四半期という明確なマイルストーンは、サプライチェーン全体の長期スケジュール計画を立てる際の参考値となり得る。月面での人間や機械による活動が本格化するにつれ、地上と月面を結ぶ通信インフラの重要性は増していくと考えられ、その需要は単一システムに留まらず、複数の冗長性を持つ構成を求める方向に向かう可能性が高い。
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Source:SpaceNews
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