EarthCARE’s view of volcanic plume boosts air safety
ことし9月上旬、インドネシアのアナク・クラカタウ火山が噴火し、欧州宇宙機関(ESA)の地球観測衛星EarthCAREがその火山灰プルームを詳細に観測した。火山灰は航空機のエンジン故障や操縦室の視界悪化を招く危険があり、今回の噴火では数千便の運航が中止され数十万人の乗客が足止めされたが、EarthCAREが取得した高精度な観測データは、航空運用を行う各国の火山灰警報センターに即座に提供され、航空安全を確保する上で大きな役割を果たした。
火山灰は細かい鉱物粒子で、ジェットエンジンに吸い込まれると高温で融着してエンジンを焼き付け、機能を停止させる危険がある。また硫黄二酸化物などの有毒ガスは機内の空気を汚染し、乗客や乗員の健康を脅かす。こうした脅威から航空を守るため、世界に9カ所の火山灰警報センター(VAAC)が配置されており、各地域の航空路を常時監視している。今回のアナク・クラカタウ噴火はオーストラリア気象局が運用するダーウィンVAACの担当区域で発生したが、同センターの予報官は既存の衛星監視ツールに加え、EarthCAREのデータを活用することで火山灰プルームの詳細な三次元構造をリアルタイムに把握し、航空機の運航高度との関係を精密に判断することができた。
EarthCAREの強みは、4つの計測機器が連携して大気中のエアロゾルを立体的に、かつ複数の側面から観測する点にある。ATLID(大気ライダー)という紫外レーザー計測装置は、紫外光を地表に向けて発射し、散乱光を計測することで、火山灰粒子の高度や濃度、化学的タイプを高精度で識別できる。雲プロファイリングレーダー(CPR)と組み合わせることで、従来なら検出困難だった火山噴出から200キロメートル離れた地点での火山灰も、粒子サイズの推定を含めて観測することが可能になった。マルチスペクトルイメージャー(MSI)は火山灰とガスの分布を画像化し、複合的な理解を支援する。これらのデータから、火山灰が予想より大きな粒子で構成されており、長く大気中に留まる可能性が示唆された。
こうした高精度な観測知見は、火山灰プルーム予測モデルの精度向上に直結し、将来の噴火時により正確かつタイムリーな航空路変更指示の実現につながると考えられる。一方、火山灰観測の重要性は航空安全にとどまらない。火山噴火で放出される硫酸塩エアロゾルが成層圏に達すると、1年以上もの間、太陽光を反射して地球全体の気温を低下させる気候影響が生じることが歴史的に知られている。EarthCAREは本来、雲とエアロゾルが地球のエネルギー収支に与える影響を理解するために設計された衛星であり、今回の噴火観測は、火山灰がどの高度に注入されどのような光学的性質を持つのかを明らかにし、気候変動予測モデルの改善に貴重な実測データをもたらす。
日本の部品・装置・素材メーカーにとって、こうした高精度な地球観測衛星の実現と継続的な運用には、精密光学センサーやレーザー技術、高度なデータ処理システムなど、多くの先端技術が必要とされる。EarthCAREの成功事例は、衛星搭載機器の国産化・高度化の道を示すとともに、防災・気候モニタリング関連インフラの需要拡大、火山灰対策の航空機エンジン部品やフィルター素材の開発、さらには地球観測データを活用したサービス産業など、様々な関連産業の成長機会を生み出す可能性を示唆している。
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Source:ESA
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