Farewell to the Fluid Science Laboratory after 18 years in orbit
2026年10月9日、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士たちが、欧州実験棟「コロンバス」に設置されていた流体科学実験装置(FSL)の最終的な撤去作業の支援を始めた。FSLは2008年2月の打ち上げ以来、18年以上にわたって軌道上で稼働を続けてきた。
FSLは、地上では重力の影響に隠れて見えにくい現象を微小重力環境で調べるための施設である。浮力や沈降といった重力由来の作用が取り除かれることで、液体、気体、泡、エマルション(乳化物)、粒状体の基本的な振る舞いを観察できる。設計上の運用期間は10年だったが、運用・保守にあたったチームの努力により、その約2倍の期間にわたって稼働した。この間に18の科学実験が行われ、軌道周回は10万1000回を超え、運用時間は4万2000時間以上に達した。GEOFLOW、RUBI、FOAM-C、COMPGRANなどの実験は、地球内部に近い現象の再現、燃焼と熱伝達、液体泡、粒状材料などを対象とした。最後の研究課題となったPASTA-3は、油と水のように本来混ざり合わない液体の乳化が、微小重力下でどう形成され、変化するかを調べるものだった。試料は2025年9月にシグナスNG-23で届き、科学運用は2026年7月に終了した。
ここで得られた知見の重みは、対象が泡、粉体、乳化物といった身近な素材であることにある。記事は、これらの振る舞いの解明が製造から食品まで幅広い産業に関わると述べている。地上の製造プロセスでは、重力による沈降や浮力が結果を左右する場面が多い。そうした影響を除いたデータは、混合や分散の条件を見直す際の材料になり得ると考えられる。また、FSLの撤去で空くスペースには、ESAのX線施設(XRF)が次に入る予定で、材料科学の研究は軌道上で続いていく。記事は、18年以上の実験で蓄積された知見と、装置を設計・運用してきた人々の経験が、今後の低軌道研究に引き継がれると結んでいる。
日本の製造業にとって、本件への直接の関与は記事には示されていない。ただ、ここで扱われた現象は、塗料、食品、化粧品、粉体材料などの工程で日々扱われるものと重なる。微小重力のデータが材料の配合や製造条件を考える一助になる可能性はあり、関連する研究の動きを追っておく価値はある。一方、装置の側から見ると、軌道上で長期間稼働し、撤去や廃棄まで見越して設計されたという経緯は、宇宙用部品に求められる耐久性と信頼性の水準を示している。国内の部品・素材メーカーが宇宙向けの品質要求を検討する際の参考になると考えられる。
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Source:ESA
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