SpaceXのスターシップが誕生10年、火星へ行くのはいつか
2026年9月28日、SpaceXの大型ロケット「Starship」が第14回試験飛行で初めて地球周回軌道に到達した。搭載していたのは同社のブロードバンド衛星網Starlinkの衛星であり、火星や月への有人飛行を見据えて開発されてきた機体が、まず衛星の軌道投入という実務的な任務で成果を出した形だ。発表から10年の節目でもあり、この到達を計画全体の中でどう位置づけるかについては、専門家の間で見方が分かれている。
背景として、2016年の国際宇宙会議(IAC)でイーロン・マスク氏が火星向けの巨大宇宙船構想を披露した当時の設計は、炭素繊維を用いる「ITS」だった。その後ステンレス製のStarshipへと設計が大きく変わり、2019年からテキサスの試験場で短い跳躍試験が始まった。2023年4月に初めて全段を組み合わせた飛行を行ったが、数分で失敗した。2024年には機体内の二つのタンク間で液体酸素を移送する試験が行われ、同年10月にはブースターを発射塔のアームで捕獲することにも成功している。ただし2025年には機体の失敗が続き、進展は直線的ではなかったと記事は指摘する。2026年5月にV3世代が初飛行し、今回の軌道到達はその延長線上にある。
今回の到達が示すのは、Starshipの当面の主な役割が商業的な衛星打ち上げにあるという点だ。欧州宇宙政策研究所のマティヤ・レンチェリ氏は、ロケットは手段であって目的ではなく、いまの役割はStarlinkの展開コストを下げることにあると述べている。次世代のStarlink V3は既存衛星より大型で重く、Starshipでなければ効率よく打ち上げられないという。一方で火星計画については、イリノイ大学のジョセフ・ゴンザレス教授が「火星を目指す姿勢は今も変わらない」と見ている。月は本格的な有人飛行の前に問題を洗い出す場所として位置づけられている。ただし、軌道上で大量の極低温推進剤を機体同士で移送する工程は、まだ実証されていない。ゴンザレス教授はこれを最も過小評価されている課題としており、2026年の火星打ち上げ窓は見送られ、次は2028年末から2029年初にかけて訪れる。
ここからは記事の事実をもとにした推測になる。Starlink V3の大型化と推進剤移送の実現が進めば、極低温の液体を扱う配管、バルブ、シール、断熱材の信頼性と量産性が一段と問われる可能性がある。燃料補給拠点を宇宙に置く構想は、真空と極低温が重なる環境で長期間機器を動かす技術が求められることを意味し、精密加工や材料評価の需要につながると考えられる。大型のステンレス構造部材についても、寸法精度と品質の安定が重要になるだろう。
日本の部品・素材メーカーにとっては、こうした極低温・真空環境向けの部品や素材を既に手がけている企業が、今後の関わりの入口になりうる。ただし記事は個別の調達計画や発注先には触れていない。現時点で具体的な受注機会があると断定することはできず、まずは対象となる要求仕様の把握から始めるのが現実的である。
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