NASA、アルテミス3号・4号・5号に向けて全速前進
NASAは、2027年半ばに地球周回軌道でアルテミスIIIの試験飛行を行い、2028年にアルテミスIVとVで宇宙飛行士を月面に送る計画を、現時点でも予定どおり進めると改めて示した。月面着陸船はスペースXのスターシップとブルーオリジンのブルームーンMK2のどちらが先に届くかは未定だが、両社とも2028年中に乗組員を月面へ運ぶ想定である。
この計画は、2025年12月にジャレッド・アイザックマン長官が就任した時点から組み替えられてきた。当初、アルテミスIIIは月面着陸を担う予定だったが、アルテミスIIの打ち上げ約1か月前に方針が修正され、アルテミスIIIは両社の着陸船と宇宙船オリオンがランデブー・ドッキングを行う地球周回軌道の試験になった。背景には、着陸船の開発の遅れと、船外活動に用いる宇宙服の遅れがある。宇宙服はアクシオム・スペースが開発しており、NASAは軽量で簡素な「ソーティ」スーツを認める形で要件を見直した。月面での滞在は2時間の船外活動2回に限られるが、初期の有人ミッションには許容できると判断された。着陸地点も南極域のままだが、50年以上ぶりの月面着陸であることや、急斜面、低い太陽角、極端な温度差といった環境の厳しさが懸念されている。一方で、永久影の領域に彗星由来の水氷があると考えられており、将来の拠点建設や推進剤の確保につながる可能性があるため、NASAは南極域を目指している。
今回の発表でとくに重要なのは、推進剤の扱いである。スターシップは地球周回軌道で極低温の推進剤を補給して月へ向かう必要があるが、そのための燃料補給基地はまだ存在せず、軌道上での極低温推進剤の移送も実証されていない。スペースXは来年初めの実施を見込んでおり、その成否が2028年の計画全体を左右すると考えられる。ブルーオリジンも当初は軌道上での推進剤移送を予定していたが、小型のブルームーンMK1を3機牽引機として使う方式に改めた。さらに、月面で極低温推進剤を使うのはアルテミスが初めてとなり、かつてのアポロが用いた推進剤とは性質が異なる点について、安全諮問パネルが懸念を示している。こうした状況から、断熱、保温、配管、バルブ、ドッキング機構といった部品の信頼性が、計画のスケジュールに直接結びついていることが読み取れる。
日本の製造業にとって、この流れは直接の受注先が特定の機体に限られる場合でも、求められる性能水準を先に見通せる局面と捉えられる。極低温環境で使える断熱材や、蒸発による損失を抑える配管・継手、長期の真空と温度差に耐える機構部品、低温下で確実に動く精密バルブやセンサーなどは、深宇宙探査に共通する課題であり、需要が続く可能性がある。宇宙服についても、軽量化と信頼性を両立させる素材や加工技術が求められるだろう。
また、米国科学・工学・医学アカデミーズ(NASEM)が、南極域以外の4地点を科学的成果が見込める候補として挙げた報告を今週公表したことは、着陸地点がこの先変わる可能性を示している。候補地ごとの要求条件は大きく異なるため、どの地点が選ばれるかによって、日本のサプライヤーに求められる仕様も変わりうる点に注意が必要である。
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