衛星データでキャベツの「買いどき」を予測、広告や販促活動に 電通・JAXA・JA嬬恋村が実証開始
イメージ 電通、JAXA、JA嬬恋村の3者が衛星データからキャベツの出荷量と価格を予測し、その情報に基づいて量販店での広告と販売促進活動を連動させる実証実験を開始した。衛星が撮影した圃場の生育状況という客観的なデータをマーケティング・チェーンと結びつけることで、フードロスの削減と販売機会の損失防止の両立を狙う、農業とデジタル技術の新しい融合例である。
この事業はJAXAのパートナーシップ事業J-SPARCの一環として展開されており、2022年に電通とJAXAが農業分野での衛星データ活用をテーマとした共創活動からスタートした。2024年にJA嬬恋村が参画して事業化の段階に移行し、2年間の実験を通じて予測精度が確認されたため、実装フェーズに進むことになった。嬬恋村はキャベツの主産地であり、収穫時期が集中するため出荷量が一時に増え、相場が大きく変動するという農業現場の構造的課題を持っていた。衛星データを活用して広い地域の生育状況を可視化することで、出荷時期の分散につなげ、農業者の収入を安定させることが期待されている。
仕組みの内容は、衛星データ解析から得られた出荷量予測に基づいて、広告と店頭販促を調整するというものである。供給が増える時期には、キャベツと関連商品の組み合わせ販売や献立提案といった販売促進を拡大して需要を喚起し、供給が減る時期には広告出稿や販促の規模を抑える。電通の説明によれば、農産物の供給と生活者の需要は異なる文脈で形成されるため、供給が過剰ながら需要が低ければフードロスが発生し、逆に需要があるのに供給不足では販売機会を失う。広告・販促をこの需給ギャップを埋める仕組みとして機能させることが狙いである。今後、首都圏と関西の量販店約50店舗で順次展開される計画である。
この取り組みから見える宇宙産業への意味は、衛星データの応用市場が従来の地図・防災から農業ビジネスへと拡がることである。JAXAは光学衛星に加え、だいち4号などの合成開口レーダー衛星データの活用も予定しており、天候や昼夜の影響を受けにくい観測が可能になれば、予測精度はさらに向上すると考えられる。複数の衛星データを組み合わせた応用事例が増えることで、衛星観測産業全体の市場が拡大する可能性があり、部品・機器メーカーにとって新たな需要源になりうる。また、電通、JAXAのほか、リモート・センシング技術センターや両毛システムズ、電通デジタル、JA全農ぐんまなど複数の企業が連携する構図は、衛星データという社会インフラを活用したエコシステムが形成されつつあることを示唆している。
日本の製造業、特に農機具・食品製造・流通設備のメーカーにとって、この流れは意味のある動きである。農業の可視化・予測精度の向上に伴い、農業者が生産計画や栽培管理をより最適化するようになれば、それに対応する農機や装置、センサー、通信機器、データ処理ソフトウェアの需要が生まれる。さらに、需給予測に基づいた流通・販売戦略の構築が広がれば、梱包、輸配送、在庫管理に関わる機械・システムへの投資が活発化する可能性がある。農業とテクノロジーの結びつきが産業化する時代にあって、衛星データ、AI予測、マーケティングの統合領域は、日本の部品・装置サプライヤーにとって戦略的に着目すべき市場になってきている。
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出典:Space Media

