Ariane 6 Lightweight Upper Stage, Future Upgrades Cancelled
欧州宇宙局(ESA)とアリアングループが開発を進めてきたアリアン6ロケットの次世代上段エンジン改良版「ICARUS」(イカルス)の開発が、2025年のESA大臣会議後に中止される見込みであることが明らかになった。炭素複合材を用いた軽量化により、月面や惑星への探査機送出能力を大幅に高める予定だったこのアップグレードの中止は、欧州の深宇宙探査能力に対する重大な制約をもたらす決定である。
アリアン6はアマゾンのLEO衛星群打ち上げに既に使用されている欧州の現在進行形のロケットシステムだ。ICARUSはこのロケットの上段エンジンを改良する計画で、正式名称を「Innovative Carbon Ariane Upper Stage」といい、タンクを炭素複合材で製造することで従来の金属タンク比で大幅な軽量化を実現し、その分をペイロード追加に回そうとするものだった。開発にあたってはフェーバスと呼ばれるテクノロジーデモンストレーターを先行させ、実現可能性を検証する計画だった。
このアップグレード計画は予算面での現実の前に挫折することになった。Block 3の開発承認にはESAの3年ごとの大臣会議での正式な予算配分が必要だが、2025年開催のCM25では人間と機械による宇宙探査活動部門が大幅に予算削減されたため、Block 3およびICARUSプロジェクトの承認が見送られたのだ。その影響は土星の衛星エンケラドゥスへの探査機を送出するESAのL4ミッションに直結した。当初はより高性能な「アリアン64 Evo」での打ち上げを予定していたが、この実現が不可能となったため、現在のBlock 2仕様での打ち上げに変更を余儀なくされ、ミッション全体の再設計が必要になったのである。
Block 3開発の優先度低下には、市場側からの圧力も存在していると考えられる。既存のアリアン6顧客の大多数は、Block 1またはBlock 2の能力で充分に満足している現状がある。既にアマゾンのLEO衛星群の打ち上げに使用されているBlock 2は、改良されたP160C固体ロケットブースター、高推力版のヴィンチ上段エンジン、第1段の各種改善を備えており、これら顧客にとって十分な性能を備えている。一方、アリアンスペース社はアマゾンのLEO衛星群やEUのIRIS2衛星システム、ドイツ軍の独立衛星システムといった大量打ち上げ需要への対応を急ぎ、打ち上げ頻度向上のための資金投入を強く求めている。限られた予算環境では、高性能版の開発よりも既存版の打ち上げ頻度向上に資金が優先配分される傾向が強まったと考えられるのだ。
日本の部品・装置・素材サプライヤーにとって、この判断の影響は複合的である。アリアン6の構造部品や推進系部品、複合材関連部品を納入している日本企業にとって、Block 2による打ち上げ需要は当面安定的で継続的な発注が見込める状況にある。しかしICARUSの中止は、次世代の炭素複合材構造部品や高性能化対応部品への事業拡大機会を失わせた。複合材の成形・加工技術を保有する企業にとって、欧州での次世代ロケット開発による技術レベルの向上や国際競争力強化という機会が縮小したことの影響は小さくない。もっとも、フェーバスのテスト活動は引き続き行われる予定であり、将来的にアリアングループが別の形でアップグレード開発を再開する可能性が完全に消えたわけではないと考えられる。
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Source:Space Scout
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