JAXAが天文衛星「XRISM」の定常運用期間延長を発表 当初予定の3年間から6.5年間へ
イメージ JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、2023年9月に打ち上げたX線天文衛星「XRISM(クリズム)」の定常運用期間を当初計画の3年間から6.5年間へ延長することを発表した。運用開始後3年で想定以上の科学的成果が得られたこと、そして現在抱えている技術課題の解決に向けた試みが今後成功する可能性があることが、延長の判断背景である。
XRISMはひとみ衛星の後継機として、NASA(米航空宇宙局)や欧州宇宙機関(ESA)との国際協力で開発された。搭載された軟X線分光装置「Resolve」と軟X線撮像装置「Xtend」により、高温プラズマの元素組成と運動を精密測定することで、銀河団の構造形成、宇宙における物質循環、超大質量ブラックホール周辺のエネルギー輸送の解明を目指している。2024年2月に定常運用へ移行して以降、ケンタウルス座銀河団の高温ガスの動きを世界で初めて高精度に測定したほか、クエーサー「PDS 456」が放つ風が複数の速度成分で構成されていることを明らかにした。さらにスターバースト銀河「M82」の中心部の高温ガス観測でも成果を上げており、これらの実績から国内外から現状レベルでの運用継続を求める要望が寄せられている。
一方で、XRISMはResolveの保護膜が開放できないという課題を抱えている。検出部を保護するために搭載されたベリリウム膜(厚さ250μm)は打ち上げ後に開放される予定だったが、現在まで成功していない。この膜が存在する限り、エネルギーが約1800eV以下のX線はほぼ遮断されるため、本来は約300eVまでのX線を捉えることが可能なResolveの性能を十分に発揮できない。JAXAの調査により、開放機構に接続されたハーネスが機構の動きを阻害していることが原因と特定されている。これまで振動による解決が試みられたが、十分な効果が得られていない。
定常運用期間の3.5年延長には、複数のシナリオが想定されている。保護膜の開放に成功した場合、1年間の観測でミッション達成が見込まれている。一方、開放に至らない場合でも、3.5年間の延長によって観測時間を確保し、制限されている有効面積を補償する形でミッション達成を目指すという方針である。保護膜展開については、より強い振動の発生や機体姿勢の変更による温度調整でハーネスの硬さを変えるなど、複数の解決策が検討されている。検出器冷却用の液体ヘリウムは2029年9月から12月までもつと見込まれており、この期限がミッション完了の実質的な目安となっている。
日本の製造業にとって、XRISMの運用延長と課題対応は、宇宙機上の部品・装置に求められる信頼性と長期性能の重要性を示唆している。精密機器の開発では、設計段階では想定しない事態に対して、軌道上から遠隔で何年もの間、対応と改善工夫が求められることになる。簡単には交換できない宇宙衛星の部品には、地上以上の品質保証と設計の堅牢性が必須である。国際的な宇宙開発プロジェクトにおいて、日本の部品メーカーと装置メーカーの品質と技術力が、こうしたミッションの継続を可能にしているのであり、これはサプライチェーン全体での責任感と競争力を示すものである。
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出典:sorae
