JAXAと東北大、マウス宇宙実験データのプラットフォームを本格稼働 加齢や創薬など、生命科学研究への応用を期待
イメージ JAXA と東北大学は、国際宇宙ステーション「きぼう」で行われたマウス宇宙実験から得られたデータと生体試料を一元的に管理するプラットフォーム「ibSLS」の本格稼働を発表した。このプラットフォームは、宇宙で起きる生体変化のメカニズムを解明し、地上での医学研究や創薬開発に応用することを目指したものだ。
ibSLS の整備は、JAXA と東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)が 2019 年に結んだ連携協定に基づくものだ。2020 年にプラットフォームの初期版が公開されていたが、今回の本格稼働にあわせて大きな機能追加が行われた。具体的には、トランスクリプトーム(遺伝子の働き方に関するデータ)やメタボローム(代謝状態に関するデータ)をウェブブラウザ上で可視化できるようになり、複数の宇宙ミッション間で実験条件や結果を横断的に比較できる環境が整った。さらに JAXA が保管する未処理組織などの生体試料へのアクセス申請も、同じプラットフォーム上で完結できるようになったという。これらの機能は、専門的な解析環境を持たない研究者でも宇宙実験データを探索・活用しやすくする設計になっている。
宇宙環境では、微小重力や宇宙放射線の影響により、骨量減少、筋萎縮、代謝異常、免疫変化といった生体変化が引き起こされる。興味深いことに、これらの変化は地上での加齢や疾患でも観察される変化と多くの共通点を持つとされており、宇宙医学に限らず加齢研究や創薬研究など幅広い分野への応用が期待されている。つまり、宇宙実験から得られるデータは、単に宇宙での医学的理解を深めるだけでなく、地上での加齢メカニズムの研究や新しい医薬品開発、疾患予防技術の開発といった多くの課題解決に役立つと考えられるのだ。宇宙という極限環境で起きる現象を研究することで、地上での医学的課題解決につながるという逆説的だが重要な関係性がそこにはある。
JAXA は今後、ToMMo との連携をさらに深め、宇宙実験データを人間の健康理解へ橋渡しする体制を整備・拡充していく方針を示している。同時に、これまで宇宙実験に関わってこなかった異分野の研究者や企業の参入も促し、宇宙実験資源を起点とした創薬や新技術、新サービスの創出に活用の幅を広げようとしている。こうした取り組みの中で、日本の部品・素材サプライヤーも新しい医療技術や医薬品開発に必要とされる機器や材料の供給者として、宇宙実験データの応用フローに関わる可能性がある。プラットフォームの本格稼働は、宇宙というフロンティアから生まれる技術革新が、日本の産業全体へ波及していくきっかけになると予想される。
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出典:Space Media
